「新しい入れ歯が痛くて入れていられない」「食事中に外れてしまう」「しゃべりにくくて人前で話すのが億劫」——入れ歯のお悩みで来院される患者さんは非常に多く、その内容もさまざまです。
このページでは、診療室でよくご相談を受ける入れ歯の7つの悩みについて、原因と対処法を歯科医師がまとめて解説します。ご自身の症状に近い項目からお読みください。

✔ この記事でわかること
- 入れ歯が合わなくなる本当の理由
- 痛い・外れる・割れた・しゃべりにくい等、悩み別の対処法
- やってはいけないNG対応
- 入れ歯を長持ちさせるお手入れと保険のルール
目次
入れ歯が「合わなくなる」のはなぜ?
まず知っておいていただきたいのは、入れ歯は作ったときがゴールではないということです。
入れ歯は、型取りをした時点でのお口の形に合わせて作られます。ところが、歯を支えていた顎の骨(歯槽骨)は、歯を失うと少しずつ痩せていきます。土手(歯ぐき)の形が変わるため、最初はぴったりだった入れ歯も、時間とともに必ず合わなくなっていきます。
「昔は調子が良かったのに最近痛い・外れる」という場合、入れ歯が壊れたのではなく、お口の側が変化していることがほとんどです。定期的な調整で対応できることが多いので、我慢せず歯科医院にご相談ください。
悩み別の原因と対処法
1. 入れ歯をはめる時に痛い
作ったばかりの入れ歯で痛む場合は、入れる方向が間違っている可能性があります。入れ歯には正しい着脱の方向があり、無理な方向から押し込むと歯ぐきを傷つけます。方向が分からなくなったら歯科医院で確認しましょう。
今まで調子が良かったのに痛くなってきた場合は、顎の骨が痩せて合わなくなってきたサインです。歯科医院での調整が必要です。また部分入れ歯では、バネ(クラスプ)がかかる歯に負担が集中して、その歯が痛むこともあります。
2. かむと痛い
原因はおもに3つ考えられます。
- かみ合わせのズレ:一部分だけが強く当たり、その部分に過大な力がかかっている
- 入れ歯と歯ぐきの不適合:かんだときに入れ歯がガタつき、粘膜に強く当たる
- 部分入れ歯の支えの歯への負担:バネのかかる歯に力が集中している
いずれも歯科医院でかみ合わせや内面の調整をすることで改善が期待できます。粘膜に傷(褥瘡性潰瘍)ができている場合は、調整後に傷が治るまで数日入れ歯を休ませることもあります。
3. はめると違和感がある
新しい入れ歯は、慣れるまでに通常2週間〜1ヶ月程度かかります。異物感・唾液が増える・吐き気がするといった症状は、多くの場合徐々に慣れていきます。ただし、痛みを伴う場合や1ヶ月以上たっても強い違和感が続く場合は、調整が必要なことがあるので受診をおすすめします。
4. 外れやすい
総入れ歯は、歯ぐきと入れ歯の間の唾液による吸着で維持されています。顎の骨が痩せて隙間ができると、吸着が弱まり外れやすくなります。裏打ち(リベース・リライン)という内面の作り直しで改善できることが多いです。
部分入れ歯の場合は、バネのゆるみが原因のことが多く、歯科医院で締め直してもらえます。市販の入れ歯安定剤は一時的な対処としては有効ですが、合わない入れ歯を安定剤でごまかし続けると顎の骨の痩せを早めることがあるため、根本的には調整・作り替えをご検討ください。
5. 入れ歯が割れた・ヒビが入った
まず大切なことをひとつ。瞬間接着剤で自分でくっつけるのは絶対にやめてください。市販の接着剤は口の中で使う安全性が確認されていないうえ、わずかにズレて接着されると修理や再製作が難しくなり、かえって高くついてしまいます。
割れた入れ歯は破片も含めてすべて持って歯科医院へ。割れ方によっては即日〜数日で修理できるケースも多くあります。
6. しゃべりにくい
入れ歯は舌の動きに関わる場所を覆うため、特に新しい入れ歯ではサ行・タ行などが発音しにくくなることがあります。多くは音読などの練習で2〜4週間ほどで慣れます。長く続く場合は、入れ歯の厚みや人工歯の位置が原因のことがあり、調整で改善できる場合があります。
7. 頬や舌をかんでしまう
歯を失っていた期間が長いと、頬や舌がその隙間に入り込む癖がついており、入れ歯を入れた直後はかみやすくなります。慣れとともに減っていくことがほとんどですが、何度も同じ場所をかむ場合は、人工歯のかみ合わせの位置(頬側への張り出し)が原因のこともあり、調整が必要です。
やってはいけないNG対応
- 自分で入れ歯を削る・曲げる:一度削ると元に戻せません。バネを自分で曲げると折れます。
- 瞬間接着剤で修理する:上述のとおり、専門的な修理ができなくなります。
- 痛いまま我慢して使い続ける:歯ぐきに傷や潰瘍ができ、悪化すると入れ歯を入れられない期間が長引きます。
- 合わないからと外したまま放置する:かみ合わせや残っている歯の位置が変化し、顎の骨も痩せて、次の入れ歯作りが難しくなります。
入れ歯を長持ちさせるお手入れ
- 毎食後、入れ歯を外して流水下でブラシ洗浄(歯磨き粉は研磨剤で傷がつくため基本不要)
- 就寝時は外して、水または入れ歯洗浄剤の液に浸けて保管(乾燥は変形のもと)
- 熱湯消毒は厳禁(樹脂が変形します)
- 残っている歯とバネのかかる歯は、むし歯・歯周病のリスクが高いため特に丁寧に磨く
調整・作り替えの目安と保険のルール
入れ歯は半年〜1年に一度の定期チェックをおすすめします。なお、保険で入れ歯を作った場合、原則として作製から6ヶ月間は保険での作り替えができないルールがあります(修理・調整は可能です)。合わないと感じたら、まずは調整で対応できないか、かかりつけの歯科医院にご相談ください。
まとめ
入れ歯の悩みの多くは、「お口の形が変化して入れ歯が合わなくなってきた」ことが出発点です。そして、そのほとんどは歯科医院での調整・修理で改善が期待できます。自己流の対処は状況を悪化させることが多いので、痛み・ガタつき・破損に気づいたら、早めに受診してくださいね。
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