歯並びが気になる

歯並びが気になる場合、まずは歯科矯正治療を受ける必要があるかどうかを、歯科医院にて相談されることをおすすめします。

歯並びが気になる

歯並びが気になると一口に言ってもその重篤度やどの程度気になっているかは人によって千差万別です。

歯科矯正が必要とは思われないような人でも、歯並びを治したいと思う方もいれば、日常生活や審美的に支障をきたすような歯並びでも、まったく気にされていない方もおられます。

しかし歯並びが悪いと、見た目以外にも歯ブラシが届きにくい部位があるため、むし歯や歯周病のリスクが高くなります。

歯並びが悪くなる理由

歯並びが悪くなる原因には、顎の大きさなど遺伝的な原因がありますが、生活習慣の中に原因が潜んでいるというケースもあります。

指しゃぶりや爪噛み、舌癖など、歯に力が加わる習慣を継続していると、歯並びに影響してきます。
また乳歯がむし歯になり、通常抜け落ちる年齢よりも早く抜歯すると、抜いたスペースに周りの歯が寄ってきて、永久歯が綺麗に生えてこないことがあります。

大人になってから歯並びが悪くなることもあります
むし歯や歯周病も歯並びに悪影響を及ぼします。特に、歯周病は歯を支えている歯槽骨が溶けてしまうため、歯が動きやすくなります。
またむし歯や歯周病が原因で抜歯した場合、抜いた部位に歯を補わず放置すると、周りの歯が動いてしまうことがあります。​

歯列不正の種類

一口に歯列不正といっても様々な種類があります。

正常な歯列は以下のようなものです。

歯同士は接して並んでおり上の前歯のほうが下の前歯よりも少し外に出ています。

①叢生

歯のサイズに対して歯の配列スペースが不足しているために、歯が重なり合うように並んだ状態をいいます。叢生は日本人において発現頻度が最も高い不正咬合であります。平成23年歯科疾患実態調査によると、12~20歳での叢生の頻度は44.2%でした。

②上顎前突

上の歯が下の歯に対して著しく前方に位置(突出)している状態をいいます。上顎前突は、歯の位置に起因するものと上あごや下あごのサイズに起因するものに分けられます。例えば、上の前歯が突出している患者さんや下の前歯が後方に位置している患者さん、あるいは上あごのサイズが大きく前方に位置する患者さんや下あごのサイズが小さく後方位を示す患者さんでは、咬み合わせは上顎前突となります。
上顎前突の原因には、母指吸引癖(指しゃぶり)、口唇癖(唇を上と下の歯の間にはさむ癖)、習慣性口呼吸およびあごの関節の病気などがあります。

③下顎前突

下の前歯が上の前歯よりも前に出ている状態をいいます。下顎前突は、上顎前突と同様、歯の位置に起因するものとあご骨のサイズに起因するものに分けられます。

④開咬

奥歯で咬んだ状態にもかかわらず、上と下の歯の間に上下的に隙間がある状態をいいます。食物を咬むための筋肉が弱く、上下的に長い顔立ちの子どもに多くみられます。開咬の原因として多いのは、母指吸引癖、舌突出癖(嚥下時や発音時に舌を前に出す癖)、食物を咬むための筋肉の活動性の低下です。

⑤空隙歯列

前述した叢生とは逆に、歯の並ぶスペースに対し歯のサイズが小さいため、歯と歯 の間に隙間がある状態をいいます。乳歯列期や混合歯列期(乳歯から永久歯に生え変わる時期)であれば、隙間があることは問題とはなりませんが、中学生以降で隙間がある場合は、不正咬合と診断されます。空隙歯列の原因としては、歯の先天欠如、歯のサイズが小さいこと、舌突出癖(舌を前に出す癖)および重度の歯周病などがあります。

⑥過蓋咬合

奥歯をかみしめた状態で上の前歯が下の前歯を過剰に覆いかぶさっている状態が過蓋咬合で、ディープバイトなどと言ったりもします。舌の前歯が全く見えない、上の前歯の裏側の根元にあたるといったことから、顎の動きに制限が加わり顎の関節に痛みが生じたり、咬むたびに歯茎を刺激し、歯肉炎になったりする症状に移行することがあります。

歯列不正を治す方法

こうした歯列不正を治すためには歯科矯正を受けることが必要になってきます。

歯科矯正は一部の例外を除き、基本的に保険が効かないため、費用が高額になります。
また、様々なオプションがあり、その必要な費用の程度も大きく変化します。

歯科矯正の必要性、歯並びの気になる程度、費用等、あらゆる面から最善の解決策を模索するためにはまず歯科医院で相談することが一番です。

​できれば歯科矯正専門医が在籍する歯科医院で相談されると、より専門的に幅広い選択肢を提示してくれる可能性が高いです。

子供の場合、基本的には歯そのもののアプローチよりも、歯列不正の原因となるような悪い癖を取り除くこともとても大切です

指しゃぶり、肘をつく、口呼吸(口が開いている)、口唇癖(唇を上と下の歯の間にはさむ癖)などの悪習癖がある場合はなるべく早めにやめさせるようにしましょう。

しかし、それだけですべて解決するというわけでもないので、歯科矯正治療が必要になってくる場合もあります。

以下に歯科矯正に関わる基本的な事項を説明していきます。

歯科矯正治療とは

歯科矯正とは、悪い歯ならびや噛み合わせを、きちんと噛み合うようにして、きれいな歯ならびにする歯科治療です。

きれいな歯ならびにするために、基本的には歯を削って「差し歯」にすることはありません。矯正装置を通じて、歯やアゴの骨に力をかけてゆっくりと動かして、歯ならびと噛み合わせを治していきます。

治療の開始時期

矯正治療は

成長が残っている思春期前に行う1期治療(小児矯正)
成長が終わった思春期後に行う2期治療

の2つにわかれます。
始める時期の違いに加えて、使う装置にも違いがあります。

1期治療

1期治療はまだ成長の余地を大きく残した状態で開始する治療で、成長のコントロールを含めた矯正治療をいいます。このため矯正治療によってある程度顔の形を望ましい形に誘導できる可能性があります。(あくまでも”ある程度”です。)
骨の成長を促進させたりすることで歯が並ぶスペースを作ることがよく行われます。

そして乳歯が生えきった時点(2歳半〜3歳頃)ですでに受け口な場合、ムーシルドのような取り外し式の矯正装置を用いることで早期に受け口の改善が見込めます

その後はしばらく様子見をし、7,8歳くらいの上も下も4本ずつ、大人の歯が生え始めた頃に、歯と骨の大きさが合わなかったり、歯列の不正があれば、固定式の装置を含めた1期治療に踏み切るかどうかを相談されてもよいとおもいます。

1期治療は必ずしなければならないというわけではなく、1期治療はやらず、2期治療ですべて治すという方針をとる先生もおられます。

先程1期治療では成長のコントロールができると書きましたが、成長は完全にコントロールできるものではなく、せっかく1期治療をしても治りきらなかった部分は結局2期治療を行わなければならないからです。

以下に1期治療を行うメリット、デメリットについて記述していきます。

1期治療を行うメリット

・骨に働きかけて、成長をコントロールし、顔の成長をある程度望ましい形に変えられる。
・2期治療をやることになったとしても、歯を抜かなくて済むようにできる可能性がある。
・2期治療をやらなくてもよい可能性がある(大事な思春期の時期にブラケットをつけなくて良い)

1期治療を行うデメリット

・子供の時期に始めるので、協力が得られにくい。(お子さん本人の協力が得られないと治療がなかなかすすみません。)

・2期治療もやることになると費用が高くなります。(1期治療と2期治療は同じくらいの値段がかかることもあります。)

・2期治療もやることになると期間が長くなります。(長い例だと、7,8歳から始めて20歳くらいまで矯正にかかることもあります。)

2期治療

2期治療はほぼ成長が終了した状態から始めるため、基本的には歯を動かすことのみを目的とします。カムフラージュ治療とも呼ばれます。大人の矯正治療はこちらに分類されます。

このため、歯を並べるスペースを作るために歯を抜く必要も出てきます

2期治療ではすべての歯にブラケットと呼ばれる装置を使ってワイヤーを用いて歯を並べていくことが多いですが、部分矯正といって一部だけ装置をつけて治すだけで十分なこともあります。

治療期間は通常2,3年であること多いですが、ちゃんと1ヶ月ごとに来院してもらう必要があったり、最後の方になってくるとゴムを毎日かけてもらったり、日々患者さんの協力が必要となる工程も出てきますので、その協力度等によっても治療は短くなったり、長くなったりします。

また治療が終わったあとはきれいに並んだ歯並びを維持するために、保定装置(リテーナー)と呼ばれる装置を入れて歯列を保持する期間がさらに2,3年かかります

矯正治療にかかる値段

矯正治療は、一部の例(遺伝的に極端に歯の数が少ない人だったり、口唇口蓋裂などのオペが必要となるケース等)を除いて自費治療になり、治療期間も長いため、その費用は他の治療よりも高くなってきます。

自費治療の場合、期間やその先生の技術、方法、地域の特性などによって大きく異なってきますが、全て包括して大体20~150万円となっています。

必ずしも高い料金を提示している先生は上手、ということではありませんが、腕のいい先生は高い料金を設定していることも多くなっています。

まとめ

矯正治療は効果の高い治療ではありますが、期間も長く、費用も高いため、あらゆる意味で治療を受ける方(お子さん)の人生に深く関わってくることもあります。

もし、歯科矯正でどこに相談したり、治療を受けたら良いかわからないという方おられましたら歯ネット公式Q&Aから質問していただければと思います。

参考文献

公益社団法人 日本矯正歯科学会 ホームページ

 

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