妊娠中

妊娠期間中で歯科治療可能な時期

赤ちゃんのお口の環境はお父さんお母さんなど周りの影響を大きく受けます。

なので妊娠中に虫歯治療や歯周病治療、メインテナンスを行うことは非常に有意義であるといえるでしょう。特に歯周病は低体重児出産とかかわりが大きいといわれていますので歯周病が疑われている方は安定期(16~27週)の治療をお勧めします。

安定期(16~27週)であれば簡単な手術や処置は可能です。治療せずに感染や疼痛をそのままにしておくほうが、妊婦に与える影響は大きいと考えられます。なお、妊娠前期は奇形を発生させる可能性があるので、応急処置のみにしましょう。

妊婦

薬、麻酔の胎児への影響

妊娠中のお薬の服用は、歯に限らず赤ちゃんの身体に影響を与えることがあるので、基本的には薬を飲まない方向で考えます。歯にとっても、妊娠中から出生後まで乳歯は形成されているため、この時期に薬を服用すると影響がでる可能性があります。とくにテトラサイクリン系の抗生物質は胎児に移行し骨格や歯に沈着し、歯を黄色に着色させますので、注意が必要です。

2%リン酸リドカイン製剤(歯科用キシロカイン、オーラ注)を通常量使用した場合、胎児や母乳への影響はほとんどないと報告されています。麻酔無しでは痛みを伴う治療の場合、痛みによるストレスを考えると、安定期(16週以降)の場合は局所麻酔を使用した方がよいでしょう。

基本的に妊娠中は薬を内服しない方がよいと考えられます。特に妊娠初期は胎児の器官や臓器の形成期であるため、薬は使用できません。しかし、薬を使用しないことで母体に悪影響があると考えられる場合には、胎児への影響の少ない(非ピリン系のアセトアミノフェン)や抗菌剤(ペニシリン系、セファロスポリン系)を必要最小限投与します。なお、授乳中の鎮痛剤や抗菌剤の使用については、母乳中に薬の成分が移行する量はわずかであるため授乳をやめる必要はないでしょう。ただし、心配な場合は授乳の直後に使用すれば影響はより少ないでしょう。

レントゲンの影響

妊娠中のX線検査による胎児への影響については、「通常に実施された多くのX線診断検査による出生前の被ばく線量では、出生前死亡・奇形・精神発達障害のリスクが増加して、自然発生率を上回ることはありません。」と日本放射線技術学会のサイトに記載してあります。
日本で1年間に浴びる自然放射線量はおよそ1.4mSvであり、歯科治療で行われるデンタルエックス線撮影150枚に匹敵します。

もちろん「放射線検査」でなく、「放射線治療」を行う場合はその限りではありません。
一般歯科の範囲においては放射線が退治に与える影響について心配していただく必要はないと言えます。

その他の注意

妊娠28週を越えると仰臥位性低血圧症候群を引き起こすことがあります。
これは、胎児をお腹に抱えたまま長期間仰向けになっていることで血管が圧迫され、心臓に戻る血液量が減少することから、血圧が下がってしまう状態です。
体調に合わせ、緊急性がない場合は無理せず産後に行うことも考えましょう。

参考文献

公益社団法人 日本放射線技術学会 サイト https://www.jsrt.or.jp/data/citizen/housya/housya-05/

公益社団法人 日本小児歯科学会 サイト
http://www.jspd.or.jp/contents/main/faq/faq01.html

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