抜歯後、数日経っても痛みが消えない

あなたは ドライソケット の疑いがあります。

親知らずなどを抜いたあと、数日たっても痛みが引かない。むしろだんだん強くなってきた——そんなときにまず疑われるのが「ドライソケット」です。抜歯後の痛みはふつう数日でやわらいでいくものなので、逆に増していくときは、傷口の治り方につまずきが起きているサインかもしれません。

ひとことで言うと
ドライソケットは、抜いた穴を守るはずの血餅(けっぺい=血のかたまり)が外れて、内側の骨がむき出しになった状態です。強いうがい・喫煙・下の親知らずの抜歯などでなりやすく、抜歯後2〜3日してから痛みが強くなるのが特徴。数日たっても痛みが増すなら受診を。多くは、洗浄や薬を詰める処置で楽になります。

この記事のポイント

  • 抜いた穴を守る「血餅」が外れて骨がむき出しになった状態
  • 強いうがい・喫煙・下顎の親知らず抜歯でなりやすい
  • 数日たって痛みが増すなら受診を。処置で和らげられる

ドライソケットって、なに?

下顎の親知らずを抜いた後の穴を比較した断面図。左は血餅で満たされた穴、右は血餅がなく骨が露出したドライソケット。
下顎の親知らずを抜いた穴(抜歯窩)の断面。左:正常な状態で、穴が赤い血餅(血のかたまり)で満たされ傷を守っています。右:血餅が外れて骨がむき出しになった「ドライソケット」。

歯を抜くと、その穴(抜歯窩)はふつう血餅(けっぺい)という血のかたまりで覆われます。血餅は「かさぶた」と同じような役割で、傷口を守り、治りを進める大切なフタです。ところが、何らかの原因でこの血餅ができなかったり、外れてしまったりすると、抜いた穴の中の骨がむき出しになります。これがドライソケットです。むき出しの骨や神経が刺激されるため、ズキズキと強い痛みが続きます。

ドライソケットは、ほとんどが下顎の親知らず(下顎第三大臼歯)を抜いた後に起こります。通常の抜歯で起こる確率は0.5〜5%程度ですが、下顎の親知らずの抜歯では明らかに高く、報告により数%〜30%程度(研究によっては約9%)とされています(NCBI StatPearls ほか)。前歯やほかの歯の抜歯で起こることは、まれです。

抜歯後の穴は、どう治っていくの?

下顎の親知らずの抜歯窩が治っていく3段階の断面図。血餅、肉芽組織、新しい骨へ置き換わる過程。
下顎の親知らずの抜歯窩を例にすると、①血餅ができる → ②やわらかい肉芽組織に置き換わる → ③新しい骨に変わっていく、という順で治っていきます。この最初の「血餅」が外れると、ドライソケットになります。

本来の治り方は、次のような流れです。まず抜歯直後は出血し、その血が穴を満たして血餅になります(〜1日)。次に血餅が肉芽組織というやわらかい組織に置き換わり(1〜7日ごろ)、さらにそれが仮の骨へ、そして本来の骨へと置き換わっていきます(2週間〜1か月ほどかけて)。つまり、最初にできる血餅は、治癒のスタート地点。ここが崩れると治りがつまずいてしまうのです。

なぜ、ドライソケットになるの?

主な原因やなりやすい条件には、次のようなものがあります。

  • 強いうがい・うがいのしすぎ:抜歯後は出血が気になってつい何度もうがいをしがちですが、強く・頻繁なうがいは、せっかくの血餅を洗い流してしまいます
  • 喫煙:タバコは血流を悪くし、吸う動作の陰圧も加わって、血餅が外れやすく・治りにくくなります。
  • 下顎の親知らずなど、難しい抜歯:処置の刺激が大きいほど起こりやすくなります。
  • 抜いた穴を指や舌でさわる:刺激で血餅が外れることがあります。

ドライソケットかな?と思ったら

まずは、抜いた穴を強い刺激から守ることが大切です。強いうがいや、指・舌で触れるのは控えましょう。痛みには、歯科で処方された鎮痛薬を用法どおりに使います。そのうえで、数日たっても痛みが強い・増していくときは、自己判断で我慢せず、抜歯した歯科医院に相談してください。ドライソケットは、適切な処置で痛みをやわらげられます。

歯医者さんでは、どんな治療をするの?

症状に応じて、次のような処置を行います。

  • 洗浄:穴の中をきれいに洗い、汚れや食べかすを取り除きます。
  • 薬剤・軟膏を詰める:痛み止めの成分を含む薬や軟膏を穴に置き、むき出しの骨を保護します。数日おきに交換することもあります。
  • 鎮痛・経過観察:痛みを抑えながら、あらためて組織が回復してくるのを待ちます。多くは日にちとともに落ち着いていきます。
予防のためにできること

  • 抜歯後は強くうがいをしない(口に含んでそっと出す程度に)
  • 抜歯後しばらくは喫煙を控える
  • 抜いた穴を指や舌でさわらない・吸わない
  • 処方された薬や、歯科からの注意事項を守る

安心して読んでほしいこと

ドライソケットの痛みはつらいものですが、命に関わるものではなく、適切な処置で必ず落ち着いていきます。多くは、洗浄や薬を詰める処置をくり返すうちに、あらためて組織が回復してきます。「抜いたあとの痛みが増してきた」ときに、我慢せず早めに相談することがいちばんの近道です。


よくある質問(FAQ)

Q. 抜歯後の痛みは、いつまで続くのが普通ですか?

A. ふつうは抜歯後2〜3日をピークに、その後はだんだんやわらいでいきます。逆に、数日たって痛みが強くなる・増していく場合は、ドライソケットなどのサインのことがあるため受診をおすすめします。

Q. ドライソケットは自然に治りますか?

A. 時間とともに落ち着くこともありますが、強い痛みが続くため、洗浄や薬を詰める処置で楽にするのが一般的です。我慢せず、抜歯した歯科医院に相談してください。

Q. 予防のために、いちばん気をつけることは?

A. 抜歯後に強いうがいをしないこと、喫煙を控えること、抜いた穴を触らないことです。せっかくできた血餅(血のかたまり)を外さないことが大切です。

Q. うがいは全然しないほうがいいですか?

A. まったくしないのではなく、「強く・頻繁に」を避けます。口に含んでそっと出す程度のやさしいうがいにとどめ、抜歯当日はとくに控えめにしましょう。

参考にした主な文献

  1. Alveolar Osteitis. StatPearls(NCBI Bookshelf):ドライソケットは下顎第三大臼歯(下顎の親知らず)で発生率が高く、通常の抜歯0.5〜5%に対しはるかに高いと報告。
  2. Daly BJM, et al. Local interventions for the management of alveolar osteitis (dry socket). Cochrane Database of Systematic Reviews.
  3. 日本口腔外科学会(抜歯後の経過・合併症について)
  4. 厚生労働省 e-ヘルスネット(喫煙の健康影響・創傷治癒への影響)
監修者 林 剛永

執筆・監修:林 剛永(Kangyeong Lim / Taketo Hayashi)
日本・米国歯科医師/口腔インプラント Diplomate(ABOI/ID・AO)| DDS・MS・DABOI/ID・DAO・AAID Fellow