食べ物が挟まりやすい

あなたは 歯と歯の隙間が開いている 反対の歯が歯と歯の隙間に噛み込んでいる。 虫歯がある 歯がかけている の疑いがあります。

食事のたびに、いつも同じ場所に食べ物がはさまる。気になって爪楊枝が手放せない——そんなお悩みはありませんか。歯と歯のあいだに食べ物が入り込むことを、歯科では食片圧入(しょくへんあつにゅう)と呼びます。

「たかが挟まるだけ」と思われがちですが、同じところにくり返しはさまるのは、その部分にすき間ができているサイン。放っておくと、むし歯や歯周病につながることもあります。ここでは、なぜはさまるのか、その原因と、おうち・歯科でできることを順番にお話しします。

ひとことで言うと
食べ物がはさまるのは、歯と歯の接触(コンタクト)がゆるんで、すき間ができていることがほとんど。原因は、むし歯や歯の欠け・歯ぐきの退縮・かみ合わせ・詰め物や被せ物の劣化などさまざまです。すき間そのものは病気ではありませんが、はさまったまま放置するとむし歯・歯周病・口臭のもとになります。同じ場所にくり返しはさまるなら、一度歯科でみてもらいましょう。

この記事のポイント

  • はさまる主因は、歯と歯の「接触点(コンタクト)」がゆるむこと
  • 背景にはむし歯・歯の欠け・歯周病(歯ぐきの退縮)・かみ合わせ・補綴物の劣化などがある
  • はさまったら爪楊枝より、フロスや歯間ブラシでやさしく取り除くのが基本

なぜ、食べ物がはさまるの?

食べ物がはさまる仕組みを示す歯の断面イラスト。左は正常な接触、右は虫歯や歯ぐきの退縮でできたすき間に食べ物が挟まった状態。
左:健康な歯どうしはすき間なく接触し、食べ物が入りません。右:むし歯や歯ぐきの退縮ですき間ができると、そこに食べ物が入り込みます。

健康な歯ならば、隣り合う歯どうしが「接触点(コンタクトポイント)」でぴったり触れ合っていて、かむたびに食べ物がそこを乗り越えてすき間に入り込まないようになっています。ところが、この接触がゆるんだり、すき間があいたりすると、食べ物が入り込みやすくなります。これが食片圧入です。

やっかいなのは、いったんはさまり始めると、その圧力で歯ぐきがさらに下がったり、歯が少しずつ動いてすき間が広がったりして、はさまりやすさが悪循環になりやすいこと。だからこそ、早めに原因を見つけることが大切です。

はさまる主な原因

食べ物がはさまる主な原因を比較したイラスト。虫歯の穴、歯ぐきの退縮によるすき間、詰め物・被せ物の段差。
食べ物がはさまる背景には、むし歯や歯の欠け・歯ぐきの退縮・かみ合わせ・詰め物や被せ物の劣化など、いくつかの原因があります。
  • むし歯・歯の欠け:歯に穴があいたり一部が欠けたりすると、その部分に食べ物が入り込みます。むし歯が原因の場合、治療しないかぎり改善しません
  • 歯ぐきの退縮(歯周病):歯周病などで歯ぐきが下がると、歯と歯の根元に三角形のすき間(いわゆるブラックトライアングル)ができ、そこに食べ物がたまりやすくなります。
  • かみ合わせ(対合歯の押し込み):かみ合う相手の歯のとがった部分(咬頭)が、食べ物をすき間に押し込むように働くことがあります。
  • 詰め物・被せ物の劣化や不適合:古くなった詰め物・被せ物とのあいだに段差やすき間ができると、そこに食べ物がはさまります。
  • 親知らず・歯並び:手前の歯とのあいだにすき間ができ、はさまりやすくなることがあります。
放置すると、どうなるの?
はさまった食べ物をそのままにしておくと、その部分にプラーク(歯垢)がたまり、むし歯・歯周病・口臭の原因になります。とくにむし歯が原因ではさまっている場合、放っておくと痛みが出たり、神経を取る治療(抜髄)が必要になったりすることも。「はさまるだけ」と軽く見ず、早めに対処するのが安心です。

おうちでできること

まずは、はさまった食べ物をその日のうちにやさしく取り除くことが大切です。

  • デンタルフロス・歯間ブラシを使う:歯ブラシだけでは歯と歯のあいだの汚れは十分に取れません。フロスや歯間ブラシを合わせて使うと、歯ぐきの炎症やむし歯の予防に役立つことがわかっています(Cochraneレビュー 2019)。
  • 爪楊枝に頼りすぎない:強く突くと歯ぐきを傷つけ、かえってすき間を広げてしまうことがあります。使うなら軽くにとどめ、フロスや歯間ブラシを基本にしましょう。
  • 自分の歯間に合った清掃用具を選ぶ:すき間の広さによって、フロスが向く場所と歯間ブラシが向く場所があります(厚生労働省 e-ヘルスネット)。迷ったら歯科で相談を。

ただし、セルフケアで取り除けてもくり返し同じ場所にはさまるなら、根本の原因(むし歯・すき間・かみ合わせなど)が残っています。その場合は歯科での対処が必要です。

歯医者さんでは、どんな治療をするの?

「すき間」そのものは病気ではないため、必ずしも治療するとは限りません。原因に応じて、次のような対処を検討します。

  • むし歯・歯の欠けが原因:むし歯を取り除いて詰め物・被せ物で修復し、歯と歯の正しい接触を回復します。
  • 歯周病が原因:歯周病の治療で炎症を抑えます。下がった歯ぐきの状態によっては、見た目やすき間への対応を相談します。
  • 詰め物・被せ物の不適合:段差やすき間ができている場合は、作り直して適合を整えます。
  • かみ合わせ・歯並びが原因:かみ合わせの調整や、場合によっては歯科矯正で改善できることもあります。
こんなときは、早めに歯科へ

  • いつも同じ場所に、くり返し食べ物がはさまる
  • はさまる部分に穴や黒ずみがある、歯が欠けている
  • その部分の歯ぐきが腫れる・出血する・においが気になる
  • 詰め物や被せ物のまわりにはさまるようになった

安心して読んでほしいこと

食べ物がはさまること自体は、多くの人が経験するありふれた症状です。すき間があるからといって、すぐに大がかりな治療が必要になるわけではありません。大切なのは、はさまったまま放置しないことと、くり返す場合に原因を確かめること。早めに対処すれば、多くはシンプルなケアや処置で落ち着きます。


よくある質問(FAQ)

Q. 食べ物がはさまるのは、むし歯のサインですか?

A. むし歯のこともありますが、歯ぐきの退縮やかみ合わせ、詰め物の劣化など原因はさまざまです。はさまる部分に穴や黒ずみがある、歯が欠けているといったときはむし歯が疑われるので、歯科で確かめるのが安心です。

Q. はさまったまま放っておくとどうなりますか?

A. たまった食べ物や歯垢が原因で、むし歯・歯周病・口臭につながります。とくにむし歯が原因の場合、放置すると進行して痛みや神経の治療が必要になることもあるため、早めの対処をおすすめします。

Q. 爪楊枝で取ってもいいですか?

A. 軽く使う分には問題ありませんが、強く突くと歯ぐきを傷つけ、すき間を広げてしまうことがあります。基本はデンタルフロスや歯間ブラシでやさしく取り除きましょう。

Q. すき間は治療で治せますか?

A. 原因によります。むし歯や詰め物の不適合なら修復で接触を回復でき、かみ合わせや歯並びが原因なら調整・矯正で改善できることもあります。すき間自体は病気ではないため、治療するかは歯科医師と相談して決めます。

参考にした主な文献

  1. Worthington HV, et al. Home use of interdental cleaning devices, in addition to toothbrushing, for preventing and controlling periodontal diseases and dental caries. Cochrane Database of Systematic Reviews. 2019.
  2. 厚生労働省 e-ヘルスネット「歯間部清掃用具(デンタルフロス、歯間ブラシ)」
  3. 日本歯周病学会「歯周治療のガイドライン」(歯周病と歯間空隙・歯ぐきの退縮について)
監修者 林 剛永

執筆・監修:林 剛永(Kangyeong Lim / Taketo Hayashi)
日本・米国歯科医師/口腔インプラント Diplomate(ABOI/ID・AO)| DDS・MS・DABOI/ID・DAO・AAID Fellow