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何もしなくても痛い原因
何かを食べたわけでもなく、冷たいものや熱いものが触れたわけでもないのに歯が痛い場合、神経が急性炎症を起こしている可能性が高いです。
専門的には,急性歯髄炎と言われます。

急性歯髄炎とは
歯髄炎は歯の中の歯髄(神経や血管などで出来た歯の骨髄みたいなもの)が炎症を起こして腫れている状態です。
歯髄炎による激痛によって夜も眠れないほどになることもあります。

急性歯髄炎の原因
外からの様々な刺激が、歯髄に加わることによって歯髄炎が生じます。
しかし、刺激があるからといって、必ずしも歯髄炎が起こるとは限りません。
歯髄炎が起こるかどうかは、刺激の性質や強さと、それらに対する歯質の性状や歯髄の抵抗力とのバランスの関係によって決まります。
急性歯髄炎の主な原因として、以下のようなものが挙げられます。
細菌的原因
最も一般的な歯髄炎の原因は細菌です。細菌の歯髄への侵入経路として、
・虫歯(う蝕)
・外傷
・歯周病の進行に伴い、
根尖から感染する経路
・菌血症により歯髄に感染する経路(非常に稀)
があります。
虫歯にかかると細菌由来の毒素や抗体などの生体由来の成分が歯髄に運ばれ、
最終的に壊死を引き起こします。

物理的原因
次は物理的な原因です。
・外傷
・咬耗(噛むことにより歯がすりへること)
摩耗(噛むこと以外の刺激で歯がすり減ること)などの機械的な刺激
・歯を削る時の熱、歯科材料による熱などの温度的な刺激
・飛行機などに乗った時や水に潜ったときなどの気圧変化
などが原因として考えられます。

化学的原因
歯の修復をする材料などに含まれる、歯髄刺激性の化学物質が原因となることがあります。
歯科材料の中で歯に対して使用する材料の中には、歯髄に害の大きいものとそうでないものがあります。歯髄に害がある可能性があるとしても、
それによって得られる患者さんへの利益が大きい場合には、使用しなければならないことも多々あります。
修復材料の中で、
・カルボキシレートセメント
・グラスアイオノマーセメント
などは、比較的歯髄への刺激が少ないと言われています。ただし、これらの材料は強度が十分でない場合もありますので、症例に合わせた選択が必要となります。

その他
その他の原因として、
・歯髄が入っている部分(歯髄腔)が石灰化を起こす
・歯髄結石という石みたいなものができることによって炎症を起こす
・また歯の内部や外部から吸収(歯が他の組織に侵食されていくこと)される
といったことによっても、炎症が起きることがあります。
急性歯髄炎の自宅でできる対処法
自宅でできる対処法はあくまで一時的な応急的処置になります。
根本的な治療を望まれる場合は歯科医院を受診するようにしましょう。
痛み止めを飲む
自宅で急に歯髄炎による激痛が出た場合は、我慢せずに痛み止めをのんでください。
おすすめなのがロキソニンです。歯医者で出される痛み止めとほぼ同じ成分です。
また、昔から使われているバファリンなども胃腸が弱い方には効果的です。

歯髄炎の歯を冷やす
歯髄炎は血液の流れが痛みの原因になります。
痛い歯を冷やすことで血液の流れが減少し、痛みが軽減します。
歯を、頬側から冷えピタや水、氷などで冷やすと痛みを抑えることができます。

噛まないように安静にさせる
歯髄炎によって噛むと痛みが出ている人は、歯に刺激を与えないようにしてください。
炎症が歯髄だけでなく歯の周りにある歯根膜まで広がっているため、噛むと痛みが出てしまいます。
歯が浮いたような感じになり、噛みにくい方は高カロリーゼリーなどで栄養と水分を摂るようにしてください。
急性歯髄炎の治療法
完成した永久歯で急性歯髄炎を起こしてしまうと、ほとんどの場合歯髄の処置をする必要があります。
炎症を起こした歯髄を取る範囲によって、抜髄法か断髄法のどちらかを選択します。
これらの処置を適切に行う際には、マイクロスコープ(顕微鏡)や歯科用CTが必要になるので、こうした機材が揃っているかどうかが良い歯科医院選びの一つの目安になります。
抜髄法
まず、この処置は痛みを伴うので麻酔が必要です。

処置を行う歯に虫歯がある場合、まず基本的にその除去を行うことが優先です。
そして虫歯等の処置が終わったらさらに歯を深く削っていき、歯髄へ到達します。
穴を掘っていくの場所や方向は、歯の種類によって異なり、解剖学の熟知が必須です。
またこの時に歯が生えている方向や歯髄の石灰化の程度を考えずに行うと、歯に人工的な穴を開けてしまう危険性を伴います。

歯髄へ到達したら、上の部分に存在する歯髄の除去を行った後、根管の入り口を発見し、ファイルという器具を使って根っこの先の方の歯髄の除去を行います。
この時に歯髄の取り残しがあると、痛み等の不快症状につながります。
抜髄が終わったら、それと同時に根管拡大・根管形成を行い、根管充填ができる状態にしていきます。


根管充填が終わった後、痛みが出ないことが確認できたら上の部分を樹脂で埋めて終わるか、歯が割れる可能性が高い場合は被せ物にして噛む力によって歯が割れるのを防ぎます。

急性歯髄炎の段階では根の先に病変をレントゲン上で確認できない場合が多いですが、稀に神経が生きていても根の先に病変が認められる場合があります。
その場合でも抜髄が成功すれば病変は次第に消えていきます。
また、根っこの治療の際にはラバーダム防湿法を行うことが推奨されています。
ラバーダムとはゴムのマスクを用いて唾液などの細菌感染源の侵入を防ぐ方法です。
根っこの治療をする際にラバーダムをしているかどうかも良い歯科医院を選ぶ際の判断基準の一つとなります。

ラバーダムの例
生活歯髄切断法
生活歯髄切断法とは、歯髄の炎症が一部分に限局している場合に、炎症が起きている部分の歯髄のみ除去して、それより先の方の歯髄を残す方法です。
断髄法とも呼ばれます。
お子さんでまだ根っこの先が完成しきっていない場合には、この方法を行うことによって根っこの成長を継続させることができます。

※イラストはあくまで治療の一例です。
参考文献
歯内療法学 第3版 医歯薬出版
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