インプラント

インプラント治療の流れと期間——初診から噛めるまでを専門医が解説【第2講】

上顎前歯部に仮歯が装着された口腔内写真。インプラント治療の流れと期間のアイキャッチ
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「インプラントにしようかな」と考えはじめた方が、ほぼ必ずぶつかる壁があります。「何回通うのか」「どのくらいの期間がかかるのか」——この2つです。

ネットで調べると「3か月」と書いてあったり「1年」と書いてあったり、まるで話が違う。それもそのはずで、インプラント治療の期間は、抜く歯の場所と、骨の状態によって大きく変わります。この記事では、実際の診療の流れに沿って、どの工程に何をしていて、なぜその時間が必要なのかをお話しします。

ひとことで言うと
条件がそろったシンプルなケースなら3〜4か月ほど。骨を作り直す処置が必要だったり、前歯で見た目を丁寧に整えたりする場合は1年近くかかることもあります。そしてその期間の大半は「待っている時間」ではなく、骨がインプラントを抱き込んでいく時間です。

この記事のポイント

  • 治療期間の長さは、ほとんど「骨の条件」で決まります
  • 前歯は奥歯より時間がかかります。見た目を作り込む工程が加わるためです
  • 歯がない期間がずっと続くわけではありません。多くの場合、仮歯が入ります

全体の流れを、まず地図で

いちばん分かりやすい「奥歯・骨の条件が良い場合」を例に、時間の流れを図にしました。

奥歯・骨の条件が良い場合の流れ 骨とインプラントが結合していく期間 (約2〜4か月・通院はお休み) 初診・検査 CT・スキャン 抜歯+埋入 同じ日に 2週間後 抜糸・消毒 型取り セラミックの歯 装着 約2週間後 ※ここから定期メインテナンスへ。骨の条件によって全体の期間は変わります
▲ 骨の条件が良い場合、抜歯とインプラントの埋入を同じ日に行えることがあります

最初に何をするの?

初回は、お口の状態を見せていただき、レントゲンやCTを撮影します。CTは骨の厚みや高さ、神経や上顎洞(上の奥歯の根の先にある空洞)との距離を立体的に把握するために欠かせません。

そのうえで、専用のソフト上でインプラントを埋める位置と角度を決めていきます。ここで大事なのは、「骨があるところ」ではなく「歯があるべきところ」から逆算して位置を決めるという考え方です。最終的にどんな歯を入れたいかが先にあって、そこから埋入位置が決まります。

インプラント治療計画ソフトの画面。CBCTの断層像・軸位断・3D再構成・パノラマ像の4画面で埋入位置と角度を検討している
▲ 治療計画ソフトの画面の一例。断層像・軸位断・3D・パノラマを同時に見ながら、1本ずつ位置と角度を決めていく(別症例。患者を特定する情報は含まれません)

手術は、どんなことをするの?

計画が決まったら、その計画どおりに埋めるための装置——サージカルガイドを作ることがあります。歯にはめる型のような装置で、ドリルを通す穴が計画どおりの位置と角度で開いています。

手術そのものは局所麻酔で行います。骨に穴を開け、インプラント体を埋め込み、縫合する。約2週間後に抜糸と消毒にお越しいただき、そこからしばらくは通院がお休みになります。

なぜ、数か月も待つのですか?

ここが、期間の話でいちばん誤解されやすいところだと思います。

埋めた直後のインプラントは、ネジの溝が骨に食い込んでいるだけの状態です。そこから数か月かけて、骨の細胞がインプラントの表面に直接くっついていきます。この現象をオッセオインテグレーションと呼びます。つまりこの数か月は、何も起きていない待ち時間ではなく、噛む力に耐えられる土台が育っている時間です。

目安は約2〜4か月。骨の質や部位、そして後述する体の状態によって変わります。仕組みをもう少し詳しく知りたい方は第1講「インプラントとは?」もあわせてご覧ください。

前歯と奥歯で、なぜ期間が違うのですか?

奥歯の場合、骨としっかり結合したら型取りをして、その約2週間後に最終的なセラミックの歯を装着します。ここで治療は完了です。

ところが前歯では、その前にもう一段階入ります。仮歯(かりば)で形を作り込む工程です。

まず仮歯の型を取って装着し、そこから歯ぐきとの調和、噛み合わせ、歯の形を少しずつ調整していきます。場合によっては歯ぐきの移植を行うこともあります。そして納得のいく形が決まってから、初めて最終的なセラミックの型を取ります。

インプラント用の仮歯(プロビジョナル)を器具で把持した写真。歯ぐきから立ち上がる部分の形が見える
▲ 仮歯そのもの。歯ぐきの中に入る根元のくびれた部分の形を少しずつ整えることで、歯ぐきのラインを作っていく

なぜそこまでするのか。前歯は、歯そのものだけでなく歯ぐきのラインが左右で揃っているかで見え方が決まるからです。仮歯で歯ぐきの形をあらかじめ整えておかないと、最終的な歯だけを立派に作っても自然には見えません。

上顎前歯部の口腔内写真。右上中切歯に仮歯(プロビジョナル)が装着されている
▲ インプラントの埋入と同時に仮歯を装着した一例。向かって左の中切歯が仮歯(別症例)

歯が入ったら、それで終わり?

型取りは、いまは光学スキャナーで行うことも増えました。粘土のような印象材を口に入れる必要がなく、数分で終わります。

口腔内スキャナーで取得した上下顎のデータ。インプラント部にスキャンボディが装着されている
▲ 光学スキャナーによる型取りの一例。インプラントの位置を読み取るための部品(白い円柱)を装着してスキャンする

そして装着したあとは、定期的なメインテナンスに移ります。インプラントは虫歯にはなりませんが、歯周病によく似た「インプラント周囲炎」は起こります。長く使っていただくために、ここからが本当のスタートだとお考えください。

期間の目安

ケース 流れ 期間の目安
奥歯・骨の条件が良い 抜歯と同時に埋入 → 2週で抜糸 → 2〜4か月 → 型取り → 約2週後に装着 約3〜4か月
奥歯・骨の条件が良くない 抜歯+骨を残す処置(リッジプリザベーション)→ 約3か月 → CTを撮り直して再計画 → 埋入+骨移植 → 2週で抜糸 → 以降は上と同じ 半年以上
前歯・骨の条件が良い 抜歯と同時に埋入 → 2〜4か月 → 仮歯で形を調整 → 最終の型取り → 約2週後に装着 半年前後
前歯・骨の条件が良くない 抜歯 → 約1か月 → 埋入+骨移植 → 2週で抜糸 → 2〜4か月 → 仮歯で形を調整 → 最終の型取り → 装着 1年近くかかることも
▲ あくまで目安です。実際の期間は診査のうえで担当医がお伝えします
🦷 専門医の臨床から|期間を長めに見るとき、短くできるとき
治癒期間を長めに設定するのは、骨の状態が良くない場合に加えて、全身の状態に配慮が必要な場合です。糖尿病などの持病がある方、一部のお薬を服用されている方、骨粗鬆症のリスクが高い方などが該当します。

逆に短くできるのは、骨の状態が良く、全身疾患がないか、あってもよくコントロールされている場合です。

患者さんからいちばんよく聞かれるのは、やはり「トータルでどのくらいかかりますか」というご質問です。お答えとしては、シンプルなケースであれば3〜4か月、複雑なものだと1年近くかかることもあります、とお伝えしています。

お薬は、必ず正確にお伝えください。ただし自己判断で中止しないでください
持病やお薬の種類によって、骨がつくまでの期間を長めに見積もることがあります。たとえば抗うつ薬を服用している方では、インプラントがうまくつかない割合がやや高いという報告が複数あります。

ただし、これは「お薬のせいだ」と証明されたものではありません。そして絶対に、自己判断でお薬を減らしたり中止したりしないでください。中断のほうがはるかに大きな不利益をもたらします。

大切なのは、服用中のお薬をすべて担当医に正確に伝えたうえで、禁煙や歯周病の管理、治癒期間の設定といったほかの条件を整えることです。

安心して読んでほしいこと

ここまで期間の話を細かくしてきましたが、通院のたびに何時間もかかるわけではありません。手術と、その後の抜糸。あとは数か月あけて型取りと装着。実際に椅子に座っている時間は、思っているよりずっと短いはずです。

そして期間が長くなるケースというのは、多くの場合「土台をしっかり作ってから進めましょう」という判断の結果です。急いで進めるより、そのほうが結果的に長く使っていただけます。


よくある質問(FAQ)

Q. トータルでどのくらいかかりますか?

A. シンプルなケースであれば3〜4か月、骨を作り直す処置が必要だったり前歯で見た目を作り込んだりする場合は1年近くかかることもあります。初診の診査でおおよその見通しをお伝えできます。

Q. 前歯と奥歯で期間は違いますか?

A. 違います。前歯は最終的な歯を作る前に、仮歯で歯ぐきの形や噛み合わせを整える工程が入るためです。この工程があるかないかで、仕上がりの自然さが変わります。

Q. 治療中、歯がない期間はありますか?

A. 多くの場合、仮歯が入ります。骨の条件が良ければ、インプラントを埋めるのと同じ日に仮歯を装着できることもあります。歯がないまま数か月過ごしていただくわけではありませんので、ご安心ください。

Q. 待っている数か月は、何もしないのですか?

A. インプラントの周りでは骨との結合が進んでいます。この間、患者さんご自身にしていただくのはお口の清掃と、必要に応じた通院です。喫煙されている方は、この期間の禁煙がとくに大切になります。

参考にした主な文献

  1. Werny JG, Frank K, Fan S, ほか. Freehand vs. computer-aided implant surgery: a systematic review and meta-analysis—part 1. Int J Implant Dent 2025; 11(1): 35.
  2. Nava P, Sabri H, Hazrati P, ほか. Accuracy of static, dynamic, and robotic guided surgery in immediate implant placement. Clin Oral Implants Res 2026; 37(5): 525-542.
  3. Andrade C. Association of selective serotonin reuptake inhibitor and other antidepressant drugs with dental implant failure. J Clin Psychiatry 2026; 87(2): 26f16375.
  4. より詳しい技術的な解説はエビデンス編「治療計画とデジタルワークフロー」をご覧ください(歯科医師向け)

執筆・監修:林 剛永(Taketo Hayashi / Kangyeong Lim)

日本・米国の両方の歯科医師免許を持つ現役歯科医師(口腔インプラント専門)。プロフィール詳細はこちら


ABOUT ME
林剛永 D.D.S., M.S., DABOI
2015年 大阪大学歯学部卒業。大阪大学歯学部附属病院での研修、約4年間の開業医勤務を経て、2020年より米国カリフォルニア州 Loma Linda大学大学院に留学し、インプラント歯科学を専攻・修了。ABOI/ID(米国口腔インプラント学会)ボード認定医(Diplomate)。現在は、インプラント治療を中心に臨床に従事しています。大学卒業後、各歯科医院によって方針や治療の幅や質にとても大きな違いがあることに驚き、患者さんが自分に最もあった治療を受けられるようになる一助になればと願い、当サイトを立ち上げました。
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