中高生

部活の帰りにスポーツドリンクを一本。塾に行く前にエナジードリンク。夜遅くまで勉強して、歯を磨かずに寝てしまう日もある——中学生・高校生の毎日は、小学生のころとはまるで違うリズムで動きはじめます。保護者の方の目も、自然と口の中から離れていく時期です。

ところが日本の統計を見ると、意外なことが起きています。むし歯のある子の割合は、中学生でいったん下がったあと、高校生でまた増えるのです。「もう大人の歯だから安心」と思われがちなこの時期は、じつは口の中がもう一度大きく揺れる数年間です。その主役が、いちばん奥に生えてくる12歳臼歯です。

ひとことで言うと
中高生の口では、12歳臼歯が生えたばかりで弱いことに加えて、飲み物で歯が溶ける思春期の歯ぐきの変化矯正装置のまわりという、この年代ならではの負荷が重なります。やることが増えるのではなく、守るポイントが小学生とは変わる——そう捉えていただくのが近いと思います。

この記事のポイント

  • むし歯のある生徒の割合は、中学校より高等学校のほうが高い
  • 12歳臼歯は生えてからの数年がいちばん弱く、その時期が中学〜高校と重なる
  • 酸っぱい飲み物は、「何を飲むか」より「どう飲むか」で差が出る

なぜ、高校生になるとむし歯が増えるの?

文部科学省の調査によると、むし歯のある者の割合は小学校・中学校・高等学校のいずれも過去最小を更新しています。とても良い数字です。ただし——学校段階の並びをよく見てください。

むし歯のある者の割合(令和7年度) 文部科学省 学校保健統計調査より作図 10% 20% 30% 40% 19.4% 幼稚園 30.8% 小学校 25.2% 中学校 32.8% 高等学校 中学 → 高校で増える
▲ 中学校でいったん下がった割合が、高等学校で再び上がります。

中学校でいったん下がった割合が、高等学校で7ポイント以上増えています。同じ生徒を追いかけた数字ではありませんし、高校生のほうが「むし歯を経験した年数」が長いぶん高く出る事情もあります。とはいえ、永久歯が生えそろってからのほうが、むし歯を持つ人が多いという事実は変わりません。

生えたての永久歯は、じつはいちばん弱い

意外に思われるかもしれませんが、生えたばかりの永久歯は、まだ完成品ではありません。歯は口の中に出てから、唾液やフッ化物を取り込んで何年もかけて硬くなっていきます。生えてからの数年が、いちばんむし歯に弱い時期です。

ここで思い出していただきたいのが、いちばん奥の12歳臼歯です。生えてくるのは12〜13歳ごろ。つまり——この歯がもっとも弱い数年間は、ちょうど中学2年生から高校生あたりに重なります。部活が忙しくなり、生活が不規則になり、保護者の目が届きにくくなる時期と、歯がいちばん無防備な時期が重なってしまうのです。

口のいちばん奥に生えた12歳臼歯に歯ブラシが届かない様子。頬の内側にブラシの先が当たり、奥の歯のかむ面に毛先が届いていない
▲ 頬の内側にブラシの先が当たってしまい、いちばん奥の12歳臼歯だけ毛先が届いていません。

しかも12歳臼歯は口のいちばん奥。頬の内側が邪魔をして、歯ブラシがまっすぐ入りません。この1本を守れるかどうかが、この時期のいちばん大きな分かれ目だと言っても言いすぎではないと思います。

この年代に特有の、3つの負荷

① 飲み物で歯が溶ける——酸蝕

むし歯は細菌が酸をつくって歯を溶かしますが、酸蝕(さんしょく)は細菌を介さず、飲食物の酸が直接歯を溶かす現象です。中高生でとくに問題になるのがこちらで、この年代のおよそ3人に1人に見られると報告されています。

歯の表面はおおよそpH 5.5あたりから溶けはじめます。ところが市販の飲料の多くは、それよりずっと酸性です。

飲み物 pH(目安)
コーラ類 約 2.4
スポーツドリンク 約 2.8〜3.0
透明な炭酸飲料 約 3.2
歯が溶けはじめる目安 約 5.5
▲ 米国で市販飲料379種類を実測した研究より(日本製品を測ったものではありませんが、傾向は共通しています)。

ただ、ここで大事なのは「何を飲むか」より「どう飲むか」です。研究でくり返し指摘されているのは、ちびちび飲む・口に含む・寝る前に飲むという飲み方。同じ一本でも、時間をかけるほど歯には厳しくなります。

もうひとつ意外なことに、酸っぱい飲み物を飲んだ直後に歯を磨く人ほど、酸蝕が多いという報告もあります。酸でやわらかくなった表面を、そのままこすってしまうためと考えられています。飲んだ直後は水で口をゆすぐだけにして、しばらく置いてから磨くほうが安全です。

② 思春期に、歯ぐきから血が出やすくなる

「歯みがきのときに血が出る」——中学生ごろから増える相談です。これについては、じつは専門家の間でも見方が分かれています。思春期のホルモン変化で歯ぐきが腫れやすくなるという報告がある一方、ホルモンよりも磨けているかどうかのほうが影響が大きいとする報告もあります。

結局、どう考えればいい?
現在の考え方では、性ホルモンは歯肉炎の「原因」ではなく、汚れによる炎症の程度を強める「後押し役」と位置づけられています。つまり——ホルモンは変えられなくても、汚れは変えられる。血が出るのは「思春期だから仕方ない」ではなく、「磨けていないサイン」と受け取るほうが実際的です。

③ 矯正装置のまわりが白くなる

この時期に矯正を始める方は少なくありません。じつは日本矯正歯科学会の指針自身が、固定式の矯正装置は口の中を汚れやすくし、歯の白い斑点は矯正治療でもっとも多い併発症であると明記しています。

この「白斑」は、装置のまわりに汚れが溜まって歯の表面が溶けはじめた状態——むし歯の一歩手前です。矯正中に半数近くの人に見られるという集計もあり、決してめずらしくありません。予防にはフッ化物が使われ、専門的な高濃度のフッ化物を定期的に塗ると白斑が減ったという報告があります。

おうちでできること

  • フッ化物入り歯みがき剤を、大人と同じ量で。歯ブラシ全体(1.5〜2cm)が目安。中高生はもう「子ども用」を使う年齢ではありません。すすぎは少量の水で1回だけ。
  • 1日2回、そのうち1回は必ず寝る前に。夜遅くなっても、これだけは。
  • 飲み物は「時間を決めて、飲みきる」。ちびちび続けるのがいちばん厳しい飲み方です。部活の水分補給は水やお茶を基本に。
  • 酸っぱいものを飲んだ直後は、まず水で口をゆすぐ。磨くのはそのあとで構いません。
  • フッ化物洗口も選択肢に。効果はよく確かめられているのに、日本ではほとんど使われていない予防法です。
  • 矯正中は、装置まわりを別枠で。ワンタフトブラシで装置の際をなぞる時間をつくってください。

歯医者さんでは、どんなことをするの?

  • 12歳臼歯のシーラント——生えたばかりの奥歯の溝を樹脂で埋めます。6歳臼歯だけでなく、12歳臼歯にも有効です。
  • フッ化物を塗る——萌出後の数年間、定期的に行う価値があります。
  • 酸蝕のチェック——前歯の裏や奥歯の面が平らになっていないか、形の変化から見つけます。自分では気づきにくい変化です。
  • 歯ぐきの評価——出血の原因が汚れなのか、他の要因があるのかを見分けます。
  • 親知らずの確認——レントゲンで、これからどう生えてくるかを見ておきます。

酸蝕やすり減りで歯が薄くなると、冷たいものがしみることがあります。しみる症状は象牙質知覚過敏のページを、6歳臼歯が生える時期については小学生の歯のページをご覧ください。

矯正は、早く始めたほうがいいの?

よくいただく質問です。ただ、はじめにお伝えしておきたいのは、子どもの矯正には先生によってさまざまな考え方や進め方があるということ。開始の時期も、何を目的に置くかも一様ではありません。

そのうえで、前歯が出ているタイプについては大きな研究があります。小学生のうちに始める2段階の治療と、永久歯が生えそろってから1回で行う治療を比べたところ、前歯をぶつけて折る事故は早く始めたほうが少なかったものの、最終的な歯並びには差がありませんでした

この結果の読みかた
これは前歯が出ているタイプに限った話です。受け口や、あごの骨格そのものに原因がある場合はまったく変わり、成長を利用するために早い時期の介入が選ばれることがあります。また歯を並べること以外の目的——指しゃぶりや口呼吸への対応、生えかわりの誘導など——で早期に始める考え方もあります。この研究だけで「早期治療に意味がない」とは言えません。

ですので「早く始めるべき」とも「待つべき」とも、ここで決めつけることはできません。大切なのは、担当の先生がなぜその時期・その方針を選んだのかを説明してもらい、納得したうえで進めることです。迷われたときは、別の意見を聞くのも自然な選択です。

親知らずは、いつごろ気にすればいい?

親知らずが口の中に顔を出すのは、思ったより遅く20歳前後です。まわりが腫れる智歯周囲炎も、20代前半がピーク。つまり高校生のうちは、痛みが出るより前の「準備段階」です。この時期にレントゲンで向きを確認しておけば、あわてずに計画が立てられます。

こんなときは、早めに歯科へ

  • いちばん奥の歯が、冷たいものでしみる/噛むと痛い
  • 歯みがきのたびに血が出る日が、2週間以上続いている
  • 前歯の裏側や先端が、透けて見える・欠けてきた
  • 矯正装置のまわりが、白くチョークのようになってきた
  • いちばん奥の歯ぐきが腫れて、口が開けにくい
  • スポーツ中に歯をぶつけた(すぐに受診してください)

安心して読んでほしいこと

ここまでリスクの話を多くしましたが、日本の中高生の口の中は確実に良くなっています。むし歯のある者の割合は中学生・高校生とも下がり続け、いずれも過去最小を更新しました。40年ほど前は9割を超えていたことを思えば、劇的な変化です。

そして、この年代でいちばん効くのは、本人が自分の歯を「自分のもの」として意識しはじめることだと感じています。保護者が管理する時期は終わりつつあります。ここから先は、寝る前の3分を自分で確保できるかどうか。やることは多くありません。だからこそ、続けられます


よくある質問(FAQ)

Q. 部活でスポーツドリンクは欠かせません。やめるべきでしょうか?

A. やめる必要はありません。問題は飲むこと自体より、だらだらと長時間かけて飲むことです。飲んだら水で口をゆすぐ、時間を決めて飲みきる、練習後は水やお茶に戻す——この3つで負担はかなり減らせます。

Q. 歯みがきで血が出ます。強く磨きすぎでしょうか?

A. 多くの場合は逆で、磨けていないサインです。汚れが残っている場所の歯ぐきが炎症を起こし、触れると出血します。毛先を歯と歯ぐきの境目に軽く当てて細かく動かしてみてください。多くは1〜2週間で減ります。それでも続く場合は歯科で相談を。

Q. 矯正中で、装置のまわりが白くなってきました。手遅れですか?

A. 白斑はむし歯の一歩手前で、まだ穴は開いていません。この段階なら、清掃の改善とフッ化物で進行を止められる可能性があります。放置すると穴になり後戻りできないので、気づいた時点で担当の先生に伝えてください。

Q. 親知らずは、若いうちに抜いておいたほうがいいですか?

A. 一概には言えません。症状のない埋まった親知らずを予防的に抜くことは推奨されていない一方、抜く必要がある場合は若いうちのほうが合併症が少ないことがわかっています。まずはレントゲンで向きと状態を確認するところから始めてください。

根拠の詳細(数値をお知りになりたい方へ)
むし歯のある者の割合(令和7年度):小学校30.83%、中学校25.23%、高等学校32.77%。いずれも過去最小(文部科学省 学校保健統計調査)。昭和54年の中学校は94.52%。
生えたての歯の弱さ:萌出後2〜4年がもっともう蝕に脆弱とされます(Lynch, Int Dent J 2013)。12歳臼歯の萌出は下顎で平均12歳6〜7か月、上顎で13歳0〜3か月(日本小児歯科学会 2019、n=30,825)。
酸蝕の有病率:8〜19歳で30.4%(95%CI 23.8〜37.0/22研究/Salas ら 2015)。炭酸飲料を飲む人ではオッズ比1.98(95%CI 1.42〜2.77/7,785人/2026年のメタ解析)。
飲み方のリスク:就寝前に飲む習慣でオッズ比7.8(95%CI 3.94〜15.42/3,812人/Al-Hadi ら 2013)。飲んだ直後の歯みがきで酸蝕が増加(Shahbaz ら 2016)。
飲料のpH:米国市販379種類のうち93%がpH 4.0未満、39%がpH 3.0未満(Reddy ら, JADA 2016)。
思春期の歯肉炎:思春期開始とともに出血傾向が増加し35%でピーク(Mombelli ら 1989)。一方、思春期段階による差はなく汚れとの相関が強いとする報告もあります(Tiainen ら 1992)。
矯正中の白斑:14研究・2,041人の合算で45.8%に新規発生(Sundararaj ら 2015/単純合算のため信頼区間の記載はありません)。高濃度フッ化物フォームでリスク比0.26(95%CI 0.11〜0.57/単一研究・確実性は低い/Cochrane 2019)。
フッ化物洗口:永久歯のう蝕を27%抑制(95%CI 23〜30/35試験・15,305人/Cochrane 2016)。日本での経験率は3.2%(令和4年歯科疾患実態調査)。
矯正の開始時期:7〜11歳開始の2段階治療と思春期の1段階治療の比較で、前歯部外傷はオッズ比0.56(95%CI 0.33〜0.95)と減少したが、最終オーバージェットに差なし(平均差0.21mm、95%CI −0.10〜0.51/27試験・1,251人/Cochrane 2018)。エビデンスの質は低い〜中等度。
親知らず:歯肉からの萌出は中央値19.8〜20.8歳(Tuovinen ら 2022)。智歯周囲炎は21〜25歳がピークで55.2%(n=2,151/Bataineh ら 2003)。

参考にした主な文献

  1. 文部科学省. 令和7年度学校保健統計(学校保健統計調査の結果).
  2. Lynch RJM. The primary and mixed dentition, post-eruptive enamel maturation and dental caries: a review. Int Dent J 2013;63(Suppl 2):3-13.
  3. 有田憲司ほか. 日本人小児における乳歯・永久歯の萌出時期に関する調査研究II ──その2. 永久歯について──. 小児歯科学雑誌 2019;57(3):363-373.
  4. Salas MMS, et al. Estimated prevalence of erosive tooth wear in permanent teeth of children and adolescents. J Dent 2015;43(1):42-50.
  5. Reddy A, et al. The pH of beverages in the United States. J Am Dent Assoc 2016;147(4):255-263.
  6. Mombelli A, et al. Gingival health and gingivitis development during puberty. J Clin Periodontol 1989;16(7):451-456.
  7. Tiainen L, Asikainen S, Saxén L. Puberty-associated gingivitis. Community Dent Oral Epidemiol 1992;20(2):87-89.
  8. Sundararaj D, et al. Critical evaluation of incidence and prevalence of white spot lesions during fixed orthodontic appliance treatment. J Int Soc Prev Community Dent 2015;5(6):433-439.
  9. Benson PE, et al. Fluorides for preventing early tooth decay during fixed brace treatment. Cochrane Database Syst Rev 2019, CD003809.
  10. Marinho VCC, et al. Fluoride mouthrinses for preventing dental caries in children and adolescents. Cochrane Database Syst Rev 2016, CD002284.
  11. Batista KBSL, et al. Orthodontic treatment for prominent upper front teeth (Class II malocclusion) in children and adolescents. Cochrane Database Syst Rev 2018, CD003452.
  12. 日本矯正歯科学会. 矯正歯科治療における標準治療の指針. 2022年9月.
  13. Tuovinen E, Ekholm M, Ventä I. Is the third molar erupting at a younger age than before? Acta Odontol Scand 2022;80(3):203-209.
  14. 日本口腔衛生学会ほか4学会. フッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法. 2023年1月1日.
  15. 厚生労働省. 令和4年歯科疾患実態調査結果の概要.
監修者 林 剛永

執筆・監修:林 剛永(Kangyeong Lim / Taketo Hayashi)
日本・米国歯科医師/口腔インプラント Diplomate(ABOI/ID・AO)| DDS・MS・DABOI/ID・DAO・FAAID

著者は ABOI/ID(American Board of Oral Implantology/Implant Dentistry)と AO(Academy of Osseointegration)の Diplomate 公式名簿に掲載されています。名簿の掲載数は ABOI/ID が世界511名(うち日本国内3名)、AO が149名です(2026年9月時点)。ABOI/ID 公式名簿AO 公式名簿