象牙質知覚過敏とは

冷たいものや歯磨きの刺激で「キーン」「ズキン」と一瞬歯がしみる場合、象牙質知覚過敏(知覚過敏)の可能性があります。

知覚過敏は、歯の表面にあるエナメル質が何らかの原因で傷ついたり喪失したりすることで、その下にある象牙質が露出することで起こります。象牙質が露出すると、冷たいものなどのさまざまな刺激が象牙細管(象牙質の中にある無数の小さな管状の構造物)を通じて歯髄神経に伝わり、脳へと伝達されることで、歯がしみる症状につながります。

象牙質知覚過敏の原因

象牙質知覚過敏の原因は、まだ不明な点も多いとされていますが、主として象牙細管が露出し、細管内の組織液が動くことで神経を刺激するという「動水力学説」が広く受け入れられています。

象牙質が露出する原因としては、以下のようなものがあります。

・強すぎる力での歯磨き(歯ぐきの退縮やエナメル質の摩耗)
・歯周病による歯ぐきの退縮
・歯ぎしり、食いしばりによる歯のすり減り(咬耗)
・酸性の強い飲食物の摂りすぎによる酸蝕
・ホワイトニングの一時的な副作用

セルフケア・自宅でできる対処法

知覚過敏は早めに歯科医院を受診することが大切ですが、忙しくてなかなか通院できない場合、自宅で試せる方法として知覚過敏用歯磨き粉(いわゆる「シュミテクト」など)があります。硝酸カリウム(カリウムイオン)という薬用成分が露出した象牙質をカバーし、象牙細管へ刺激が伝わりにくくすることで、症状の緩和が期待されています。

ただし、この効果についてはコクランレビュー(系統的レビュー)でも検証されており、「硝酸カリウム配合歯磨き粉の効果を明確に裏付ける強い証拠は現時点では得られていない」と結論づけられています(参考文献参照)。一部の客観的な測定では改善がみられたものの、患者さん自身の自覚症状の評価では、はっきりとした差が確認されなかったためです。過度な期待はせず、1〜2週間使用しても改善がない場合や、症状が強い場合は歯科医院を受診してください。

また、症状がある間はしみる原因となる冷たいもの・熱いものをむやみに摂らないようにすることも、悪化を防ぐうえで大切です。

歯科医院での治療法

動水力学説に基づき、象牙質表面を歯科材料で覆う方法や、象牙細管を閉塞させることで刺激を遮断することが、治療の基本方針となります。

・薬物の塗布(フッ化ジアミン銀、フッ化ナトリウムなど)
・象牙質の被覆(グラスアイオノマーセメントやレジン、バーニッシュなどで露出した象牙質を覆う)
・レーザーの使用(神経の鈍麻や象牙質の溶解など)
・イオン導入法(亜鉛イオンやフッ素イオン)
・抜髄処置(他の方法で症状が改善しない場合の最終手段)

虫歯や歯周病との見分け方

「冷たいものがしみる」という症状は、知覚過敏だけでなく、虫歯(う蝕)や歯髄炎でも起こります。知覚過敏の場合は刺激を受けた瞬間だけ一過性にしみることが多いのに対し、虫歯が進行している場合や歯髄炎を起こしている場合は、刺激がなくなった後もズキズキとした痛みが続くことがあります。自己判断は難しいため、症状が続く場合は歯科医院で診断を受けることをおすすめします。虫歯の進行度については「虫歯(う蝕)とは」、歯の神経の炎症については「歯髄炎とは」のページもあわせてご覧ください。

まとめ

象牙質知覚過敏は、エナメル質の下にある象牙質が露出することで起こる、一過性の「しみる」症状です。市販の知覚過敏用歯磨き粉はセルフケアの選択肢の一つですが、効果を裏付ける強いエビデンスは現時点では十分ではないとされているため、過信せず、症状が続く場合は歯科医院を受診することが大切です。

参考文献

・Cochrane Database of Systematic Reviews「Potassium nitrate toothpaste for dentine hypersensitivity」(Poulsen S, et al., 2001年; 2006年更新)