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口が開きにくい
口が開きにくい場合、真っ先に疑われるのは顎関節症です。
顎関節症とは
顎関節症は、
ー開口障害あるいは顎運動異常(動かしづらい)
ー顎関節やあごを動かしている咀嚼筋の痛み(痛み)
ー顎関節雑音(音)
を主要症候とする障害をとりまとめた病名です。
その中には、
①あごを動かす筋肉の痛みを主な症状とするもの(咀嚼筋痛障害)
②顎関節の痛みを主な症状とするもの(顎関節痛障害)
③顎関節の中の関節円板のずれが生じるもの(顎関節円板障害)
④顎関節を構成する骨に変化が生じるもの(変形性顎関節症)が含まれています。
口が開かない原因
- 顎関節症では、顎関節内部の関節円板がずれて、関節の動きを妨げている場合や、咀嚼筋の痛みのためにあごが動かせない場合があります。また、痛みのために口を大きく開けないで、使わないでいることで、顎関節や咀嚼筋の運動が制限されてしまうことがあります。
一方、口が開けにくくなる疾患は、炎症や腫瘍など他にもありますから、自己判断せずに医療機関を受診されることをお勧めします。
痛みの原因
顎関節症の痛みは、大きく分けると顎関節と咀嚼筋(噛む時に使う筋肉)の痛みになります。そして、そのどちらか、あるいは、両方に痛みがある方がいます。
顎関節の痛みは、顎関節周囲に炎症がある場合、また、咀嚼筋の痛みは、筋・筋膜痛(筋肉と筋肉を包む膜に生じる痛み)が生じている場合などに生じます。
しかし、顎関節症に限らず、痛みは、
・侵害受容性(局所の炎症などの問題が関係している)
・神経障害性(局所から中枢までの神経系の問題が関係している)
・心因性(環境や性格などの問題が関係している)
・原因不明
といった原因で起こります。
顎関節症の患者さんの中にも、顎関節や咀嚼筋の傷害だけでは説明のつかない痛みもあり、心理的あるいは社会的なストレスが関係している方もおりますので、強い痛いが続く時には、日本顎関節学会認定の専門医の診察をお勧めします。
音がする理由
顎関節内部の関節円板がずれている時に、あごが動いた際に引っかかって音がすることや、顎関節を構成している骨の形が変化して、こすれあったような音がすることがあります。
また、人によっては、大きく口を開けると、関節の前の突起を乗り越えることがあり、その際にガクンと音がすることもあります。
治療法
生活指導
顎関節症の治療にはは普段から生活に気をつけていくことが必要です。
・顎関節や咀嚼筋への負担を減らすため、硬い食品や長時間の咀嚼は避ける
・頬杖をやめることや猫背などの姿勢をよくする
・仕事中や休息時に上下の歯が接触していることに気付いたら歯を離すようにする
・特に強い心理的な緊張を感じる環境があれば、それを改善し避ける。
などを心がけていただくといいと思います。
理学療法
学療法には物理療法と運動療法があり、また、医療者が行うものと患者さん自身が行うものに分けられます。
物理療法は、手指による筋肉のマッサージ、ホットパックなどによる温罨法、低周波治療による筋肉への電気刺激、鎮痛を目的としたレーザー照射などがあります。
運動療法には、筋肉や靭帯などの柔軟性や伸張性を改善するストレッチや、関節へ直接アプローチして顎関節の動きを良くして開口量を増加させる下顎可動化訓練、また、疲れやすい筋肉を鍛えて耐久性を向上させる筋力増強訓練などがあります。いずれにしても、医療者の指導を受けて行って下さい。
薬剤療法
医療機関では、顎関節や咀嚼筋の痛みに対して、消炎鎮痛薬を用います。基本的には決まった時間に、決まった期間服用します。症状に応じて、薬の種類や服用方法を調整します。
しかし、薬を服用しても改善しない場合は、他の原因や治療法を考える必要がありますので、専門医のいる医療機関でご相談下さい。
マウスピース療法について
最も一般的なスタビリゼーション型アプライアンスは、上顎または下顎の全歯列を覆うもので、睡眠時のはぎしりやくいしばり(睡眠時ブラキシズム)時の咀嚼筋の緊張の緩和や、顎関節部への負荷の軽減を目的としています。
上記方法が効かない場合には外科的療法をとる場合もあります。
その他
その他にも、親知らずを抜いたあとや、細菌感染の重症化など、炎症があることによって口が開かなくなってしまうことがあります。
この場合、痛みが原因で開けられないことがほとんどです。
顎関節症の場合と違って炎症が治れば痛みもなくなり、正常に開くようになりますが、炎症を放っておいたまま長期間経過すると炎症が治っても口が開きにくくなってしまうこともありますので、いずれにしても自己判断で放置せず、一度歯科医院にかかることをおすすめします。
参考文献
一般社団法人 日本顎関節学会 ホームページより
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