歯の変色が気になる

「鏡を見たら歯に黒い点がある」「前歯に白い斑点が目立つ」「1本だけ色が変わってきた」——歯の色の変化には、単なる着色汚れから、むし歯や神経のトラブルのサインまで、じつにさまざまな原因が隠れています。このページでは、色のパターン別に、考えられる原因と対処法を順番にお話しします。

ひとことで言うと
歯の変色は、大きく「外側の着色」と「内側からの変色」に分けられます。コーヒー・お茶・タバコなどの表面の着色はクリーニングで落とせますが、1本だけ茶〜グレーに変わる・白い斑点が広がる・痛みを伴うといったときは、むし歯や神経のトラブルのサインのことがあります。色と変化のしかたで見分けつつ、気になるものは一度歯科でみてもらいましょう。

この記事のポイント

  • 変色は「外側の着色(クリーニングで落ちる)」と「内側からの変色」に大別できる
  • 黒・白・赤・茶など、色によって考えられる原因が違う
  • 1本だけ・だんだん進む・痛みを伴う変色は、受診の目安

なぜ、歯の色が変わるの?

歯の変色の2タイプを比較したイラスト。左は表面についた外側の着色、右は神経のトラブルなどで内側から暗く変色した歯。
左:コーヒーやお茶などが表面についた「外側の着色」(クリーニングで落とせます)。右:神経が死ぬなどで内側から暗く変色した歯(1本だけ色が違うのが特徴)。

歯の変色は、大きく2つに分けて考えると分かりやすくなります。ひとつは外側の着色(外因性)。コーヒー・お茶・赤ワイン・タバコなどの色素が歯の表面につくもので、多くはクリーニングで落とせます。もうひとつは内側からの変色(内因性)。むし歯や神経が死ぬこと、生まれつきの歯の質、飲んだ薬などで、歯そのものの色が内側から変わるものです(Watts & Addy, British Dental Journal 2001)。表面の汚れなのか、内側からの変色なのかで、対処がまったく変わります。

色別に見る、原因と対処

歯の色別の変色を比較したイラスト。黒い点、白い斑点、茶色い着色の3タイプ。
色によって考えられる原因は違います。左:黒い点(むし歯など)/中央:白い斑点(初期むし歯や生まれつき)/右:茶色い着色(ステインなど)。

黒っぽい

溝や歯と歯の間の黒い点・黒ずみは、むし歯の可能性がまず考えられます。黒くても進行が止まっているものもあれば、中で大きく広がっているものもあり、見た目だけでは判断できません。ぶつけた歯や深いむし歯で神経が死ぬと、歯全体が茶〜黒っぽく変わっていきます。ほかに、古い金属やプラスチックの詰め物・被せ物の劣化、コーヒーやタバコなどの着色(ステイン)でも黒く見えます。着色ならクリーニングで落とせますが、放置してよいかどうかの見極めは診断が必要です。

白っぽい・白い斑点がある

初期むし歯(脱灰)では、表面のミネラルが溶け出してツヤのない白濁として現れます。この段階なら削らずに、フッ化物などで再石灰化を促して経過を見られることが多いです。生まれつきのエナメル質形成不全や、歯の形成期に多量のフッ素を長期に摂った場合のフッ素症でも白濁が見られます(日本の水道水やフッ素入り歯みがきの通常使用で起こる心配はほぼありません)。白い斑点が「進行中の初期むし歯」なのか「生まれつき」なのかで対応がまったく違うため、一度診てもらうと安心です。

赤っぽい・ピンクっぽい

ぶつけた後などに歯が赤み・ピンク色を帯びる場合、歯の内部で出血や組織の変化(内部吸収など)が起きていることがあります。自然には戻りにくく、早めの受診が望ましい変色です。

茶色っぽい着色

コーヒー・お茶・赤ワイン・タバコなどによる表面の着色が代表的で、これはクリーニングで落とせます。一方、飲み薬(テトラサイクリン系など)の影響で歯の内側から帯状・全体的に茶色くなっているものは、内因性でクリーニングでは落ちず、必要に応じて審美的な治療を検討します。

子どもの歯が青っぽい場合

乳歯や生えたての歯が青みがかって見えることもあります。詳しくは「歯の色が青っぽい」で解説しています。

受診したほうがいい変色の見分け方

次のような変色は、むし歯や神経のトラブルが隠れていることがあるため、早めの受診をおすすめします。

  • 1本だけ、まわりの歯と色が違ってきた(神経が死んでいるサインのことがある)
  • 白い斑点や黒ずみがだんだん広がってきた(進行中のむし歯の可能性)
  • 変色にしみる・痛みを伴う
  • ぶつけた後に色が変わってきた

歯医者さんでは、どんな治療をするの?

原因(外側の着色か、内側からの変色か)に応じて方法を選びます。

  • クリーニング(PMTC):表面の着色汚れを落とします。外側の着色にはこれが基本です。
  • ホワイトニング:加齢などによる全体的な黄ばみを薬剤で白くします。
  • ウォーキングブリーチ:神経を取った歯が内側から黒ずんだ場合に、歯の内部から白くする方法です。
  • ダイレクトボンディング(レジン)・ラミネートベニア・セラミック:白い斑点や部分的な変色を、樹脂やセラミックで自然な色に整えます。
  • むし歯の治療・フッ化物での再石灰化:むし歯や初期の脱灰には、進行度に応じた処置を行います。

歯の色だけでなく、黄ばみや歯並び・歯ぐきの下がりなど、見た目全体が気になる方は「歯の見た目が気になる」もあわせてご覧ください。

こんなときは、歯科へ

  • 1本だけ、まわりと色が違ってきた
  • 黒ずみ・白い斑点がだんだん広がってきた
  • 変色した部分がしみる・痛む
  • ぶつけた後に色が変わってきた

安心して読んでほしいこと

歯の変色の多くは、コーヒーやお茶などによる表面の着色で、クリーニングやセルフケアで対応できるものです。一方で、色は歯からの大切なサインでもあります。とくに「1本だけ」「だんだん進む」変色は、むし歯や神経のトラブルが隠れていることがあるので、迷ったら一度みてもらうと安心です。早く原因が分かれば、選べる対処も増えます。


よくある質問(FAQ)

Q. 歯の着色はクリーニングで落ちますか?

A. コーヒー・お茶・タバコなどによる表面の着色(外因性)は、クリーニングで落とせることが多いです。ただし、内側からの変色(むし歯・神経のトラブル・薬の影響など)はクリーニングでは落ちず、別の治療が必要です。

Q. 1本だけ色が濃くなってきました。大丈夫ですか?

A. まわりの歯と1本だけ色が違ってくる場合、その歯の神経が死んでいるサインのことがあります。痛みがなくても進行することがあるため、一度歯科でみてもらうのがおすすめです。

Q. 前歯の白い斑点は治せますか?

A. 初期むし歯(脱灰)による白濁は、フッ化物などで再石灰化を促して改善を目指せることがあります。生まれつきのものは、レジンやセラミックで見た目を整える方法があります。まずは原因の見きわめが大切です。

Q. 市販のホワイトニング歯みがきで白くなりますか?

A. 表面の着色を落とす助けにはなりますが、歯そのものを内側から白くする効果は限られます。全体的な黄ばみが気になる場合は、歯科でのホワイトニングを相談してみてください。

参考にした主な文献

  1. Watts A, Addy M. Tooth discolouration and staining: a review of the literature. British Dental Journal. 2001.
  2. 厚生労働省 e-ヘルスネット「フッ化物」「歯のフッ素症」
  3. 日本歯科保存学会/日本歯科審美学会(脱灰の再石灰化・ホワイトニングについて)
監修者 林 剛永

執筆・監修:林 剛永(Kangyeong Lim / Taketo Hayashi)
日本・米国歯科医師/口腔インプラント Diplomate(ABOI/ID・AO)| DDS・MS・DABOI/ID・DAO・AAID Fellow