腕が良いと治療が痛い?
タイトルを見て、あれ?と思われた方もおられるかもしれませんね。
普通、腕が良いほど治療は痛くないと思いますよね?
というか、腕が良くても痛いくらいだったら、治療の上手さなんていいから痛くない治療をしてほしい!!
という方も多くみえるかもしれません。
さて、今回こうした一見おかしく思えるタイトルを設定した理由は、
痛くない治療をする歯科医師が、必ずしも良い歯医者であるということではない、ということをお伝えしたかったからです。
以下にその詳細を記していきますね。
必要部分に必要なだけの治療を
では例を上げて説明していきましょう。
皆さんは歯石取りをしたことはありますでしょうか?
歯石取りをする場合、麻酔をかける場合と、かけない場合があります。
言うまでもなく麻酔をかける一番の理由は、治療中に感じる痛みをなくし、治療中に患者さんに与える苦痛を軽減させる為です。
それはとても大切で、必要なことです。
しかし、ここで重要なことは、患者さんが痛みを感じ、伝えることで、
それ以上術者が患者に侵襲を与えることを止められるのです。
人間の生体における痛みの役割というのは、自分自身の体への脅威から身を守り、死を避けることです。
つまり、生きた組織というのは侵襲を受けると痛みを感じるようにできており、
痛みを感じるということはそれ以上の侵襲を加えてはいけませんよというシグナルでもあるのです。
もちろん感染を除去する時に、振動や熱などが伝わって、
間接的に痛みを引き起こすこともあるので、一概にすべてがそうということはありません。
しかし、麻酔をしてしまう(痛みを感じなくする)ことによって、
本来除去すべき範囲を逸脱して、侵襲を与えてしまうことにもつながるのです。
その代表例が‘歯石取り’になります。
歯石取り
歯石取りでは、根っこの表面に付着している歯石を取る必要がありますが、
歯を抜かなければならないような重症な症例でない限り、
深い先端の部分では生きた組織が根っこに付着しています。
それは器具で触っただけで判断するのは、ほぼ不可能に近いでしょう。
従って、患者さんの許可を取ることができれば(ここ重要です!)、麻酔をせずに歯石をとっていき、
患者さんが痛い!と仰っしゃれば、それ以上深くを触ってはいけない、ということになります。
つまり、最初から全く痛みを感じない治療というのは、
触らなくてもよい、もしくは触ってはいけない組織まで触っている可能も高いのです。
ただし、ここで気をつけなければならないのは、痛みの感じ方はその患者さんごとに異なるため、
痛いところ=健全というわけではなく、痛いところは健全である可能性が高い。ということです。
それは神経の治療でも同じことが言えます。
神経(歯髄)の治療
神経(歯髄)は、均等かつ同時に壊死していくわけではなく、多くは歯の上の方(感染源の存在する方)から壊死していきます。
つまり、レントゲン上では神経がすべて壊死しているように見えても、
実際は根の先の方だけ神経が生きているということは多くあります。
そして壊死している神経組織を除去している間は、麻酔をしなくても痛みを感じないため、
上の方から除去していき、痛いと患者さんがおっしゃった時点で適切な材料で蓋をすることで、
神経を少しでも保存することができます。
※あくまでも治療の一例です。
しかしながら最初から痛みを感じないように麻酔をしてしまうと、
取らなくても良い神経まで除去してしまっている可能性が高いのです。
以上のような理由から、何でもかんでも麻酔をかけて痛みをなくしてしまうのが良い、
とは言えないのです。
しかし、痛みに弱い患者さんなど、とにかく痛みなく治療してほしいという方には、
侵襲を加えすぎるリスクを背負いながらも麻酔をしてあげなければなりません。
いい歯医者さんであるかどうかは、
・そうした患者さんのパーソナリティを会話の中で見抜きながら、
・術者の自己満足ではなく、
・患者さんの最も重要視することと、
・医学的妥当性をすり合わせて考え、
・最良の処置の方法を模索でき、
・また術者だけが理解ているのではなく、
・患者さんにもそのリスクとメリットをわかりやすく説明し、
・同意を得られる
歯科医師であるかどうか、ということではないかと考えます。
患者さん側としては、きちんと自分がどういう治療を望んでいるのかを伝えるようにすると、
歯科医師側もスムーズにその希望に添えるよう努力できるのではないかな、と思います。
まとめ
・・・少し難しかったでしょうか??^^
まとめると、
痛みというのは体に危険が迫って来ているサインであり、むやみに麻酔で痛みを抑えてしまうと治療の行き過ぎに繋がることもあります。
というお話でした!^^
とはいえ、痛くない治療の方が絶対にいいですよね!
世の中にはいろいろな情報が溢れていますが、
そうした情報の中には偏ったものや、嘘も多くみられます。
今後も、皆様がそうした情報に出会った時に、
少しでも惑わされないようにするお手伝いをさせていただければ幸いです。
それではまた次回の記事でお会いしましょう〜!
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