「甘いものは、少し控えましょう」
歯科医院でこう言われると、「むし歯にならないためね」と思うかもしれません。もちろん、それは大切な理由です。
ただ、砂糖の摂り方を見直すことは、体全体の健康を考える食生活とも重なっています。
2026年9月30日、『Clinical Oral Investigations』に、砂糖摂取と口腔・全身の健康について228本のシステマティックレビューをまとめた研究が発表されました。(文献1)
とはいえ、「砂糖が悪い」とだけ聞いても、何を変えればよいか分かりませんよね。
ジュースとケーキでは違うのか。果物にも糖があるけれど、減らすべきなのか。「フリーシュガー」とは何なのか。
この記事では、研究から分かったことと、毎日の食生活で考えたいことを分けて整理します。
この記事のポイント
- 228本のレビューをまとめた研究では、砂糖摂取と、むし歯だけでなく肥満や2型糖尿病などとの関連が整理されました。
- ただし、レビューの約71%は方法論的な質が「低い」または「極めて低い」と評価されており、結果の解釈には限界があります。
- フリーシュガーは、食品・飲料に加えた糖に加え、蜂蜜や果汁などに含まれる糖も対象とする分類です。
- 甘い飲み物は、飲んだカロリーの分だけ食事が減るとは限らず、エネルギーの摂りすぎにつながりやすい点に注意が必要です。
- 「飲み物はすべて悪い」「固形のお菓子なら安心」という話ではありません。摂取源・量・頻度を一緒に考えましょう。
228本のレビューをまとめた研究とは
今回の研究は「アンブレラレビュー」です。複数の一次研究を集めるシステマティックレビューを、さらに集めて全体像を整理する研究方法です。
研究チームはPubMed、Cochrane Library、Epistemonikosを使い、2026年3月まで検索しました。見つかった10,593件から、最終的に228本のシステマティックレビューを採用しています。(文献1)
つまり、228人を調べた研究でも、228本の新しい実験を行った研究でもありません。これまでの研究の蓄積を、口の健康と体の健康を横断して読み直したものです。
むし歯だけではない。ただし、関連と原因は別
今回のレビューでは、砂糖摂取と口腔疾患に加え、肥満、2型糖尿病、心血管疾患、全死亡などとの関連が整理されています。そのほかにも、肝臓・腎臓の病気、痛風など、幅広い健康アウトカムが扱われました。(文献1)
ここで大切なのは、「砂糖がさまざまな病気を直接引き起こすと、この研究だけで証明されたわけではない」ということです。
観察研究では、砂糖を多く摂る人と少なく摂る人で、食生活全体、運動、喫煙なども違う可能性があります。関連があっても、影響を砂糖だけに切り分けられるとは限りません。
さらに、AMSTAR-2という方法でレビューの方法論的な質を評価すると、98本が「critically low」、64本が「low」でした。合計162本、全体の約71%です。これはレビューの方法や結果への信頼性の評価であり、「結果の71%が間違い」という意味ではありません。(文献1)
レビュー間で同じ一次研究が重複している可能性や、「砂糖」の定義が研究によって異なる点も限界です。228本という数だけで、独立した証拠が228個あると考えないようにしたいところです。
フリーシュガーとは? 食品別に整理
フリーシュガーとは、食品や飲み物に加えた糖と、蜂蜜・シロップ・果汁などに含まれる糖のことです。丸ごとの果物や牛乳にもともと含まれる糖は対象外です。(文献2)
WHOが減らすよう勧めているのは、free sugars(フリーシュガー/遊離糖類)です。
これは特別な砂糖の名前ではなく、摂取量を管理するための分類です。「シュガーフリー=糖が入っていない」という表示とも別の言葉です。
WHOの定義では、次の2つが含まれます。(文献2)
- 食品や飲み物に加えた糖:メーカー、料理をする人、食べる本人が加える砂糖など。
- 蜂蜜・シロップ・果汁・濃縮果汁にもともと含まれる糖:砂糖を追加していなくても対象です。
一方、丸ごとの果物・野菜や、牛乳にもともと含まれる糖は、この定義の対象ではありません。
| 食品・飲み物 | フリーシュガーに当たる部分 |
|---|---|
| りんごをそのまま食べる | もともと含まれる糖は対象外 |
| 果汁100%のりんごジュース | 果汁に含まれる糖が対象。砂糖不使用でも含まれる |
| 無糖の牛乳 | もともと含まれる乳糖は対象外 |
| 牛乳に砂糖を加えた飲み物 | 加えた砂糖の分が対象 |
| ケーキ・クッキー | 作るときに加えた砂糖などが対象 |
| 蜂蜜・メープルシロップ | 含まれる糖が対象 |
表はWHOの定義を具体例に当てはめたものです。(文献2)
「天然だから対象外」「飲み物だから全部対象」という分類ではないことが分かります。
また、フリーシュガーに含まれる食品同士でも、栄養成分や健康への影響がすべて同じとは限りません。対象外の食品なら、いくら摂ってもよいという意味でもありません。
飲む砂糖と食べる砂糖は、何が違う?
コーヒーに入れた砂糖と、クッキーに練り込んだ同じ砂糖が、別の物質になるわけではありません。
違うのは、食品の形、ほかの栄養成分、満腹感、そして結果として摂る量です。
甘い飲み物は、食事にカロリーが上乗せされやすい
砂糖入り飲料では、飲んでエネルギーを摂っても、その分だけ次の食事が減るとは限りません。WHOの解説でも、満腹感の得られにくさと、飲んだ分を食事で十分に調整できないことが、体重増加につながる仕組みとして挙げられています。(文献3)
例えば、いつもの昼食に甘い飲み物を付けても、昼食の量はいつもどおり。さらに午後にも甘いカフェドリンクを飲む。こうした習慣では、飲み物のエネルギーが上乗せされます。
説明用の仮の例ですが、糖が100mL当たり10gの飲み物なら、500mLで糖は50g、糖由来のエネルギーは約200kcalです。実際の量は商品によって違います。
「食べ物」も、果物とお菓子では違う
りんごそのものは、噛んで食べ、食物繊維なども一緒に摂ります。一方、ケーキやクッキーには、加えた砂糖に加えて脂質なども含まれます。「固形の食品」という共通点だけで、健康への影響を一括りにはできません。
そのため、「飲み物の砂糖は悪いが、お菓子の砂糖なら安心」という結論にはなりません。お菓子に加えた砂糖も、減らす対象のフリーシュガーです。
「68%が飲料の研究」は、危険度の比較ではない
今回のレビューでは、摂取形態の詳細データが得られたもののうち、132本、68%が砂糖入り飲料を扱っていました。(文献1)
これは「どの摂取源について研究が多かったか」という数字です。同じ量の砂糖を飲んだ場合と食べた場合を直接比較し、飲料のほうが何倍危険だと示した数字ではありません。
研究結果を読むときは、「砂糖全般の話なのか」「砂糖入り飲料の話なのか」を区別する必要があります。
歯への影響は、量と頻度、酸も考える
歯については、体重とは違う仕組みも考える必要があります。
むし歯では、歯の表面の細菌が糖を利用して酸を作り、その酸によって歯のミネラルが失われます。甘い飲食物の量だけでなく、摂る頻度も大切です。(文献4)(文献5)
仕事中に甘い飲み物を少しずつ飲み続けたり、お菓子を何度もつまんだりする習慣は、見直したいポイントになります。
また、酸蝕(さんしょく)は、むし歯とは別の現象です。飲食物などの酸が、歯を直接溶かすことで起こります。酸性の飲み物では、砂糖が含まれているかどうかとは別に注意が必要です。(文献6)
「砂糖ゼロなら、歯への影響もゼロ」とは言い切れないのは、このためです。
むし歯の進み方や予防方法は、関連記事「虫歯(う蝕)の進行段階と予防・治療」でも詳しく解説しています。
フリーシュガーの摂取目安と減らし方
▲ フリーシュガーに含まれる糖と、対象外となる糖の違いを整理した図。
WHOは、フリーシュガーを1日の総エネルギー摂取量の10%未満に減らすことを強く推奨しています。さらに5%未満への削減は、むし歯予防などの追加的な利益を見込む条件付きの推奨です。(文献2)
仮に1日2,000kcalなら、10%は糖50g、5%は25gに相当します。これは飲み物、お菓子、料理などから摂るフリーシュガーの合計であり、食卓で使う砂糖だけの量ではありません。また、2,000kcalは計算例で、全員に共通の必要量ではありません。
毎日細かく計算するのが難しければ、まず次のような見直しから始められます。
- 普段の飲み物を確認する:加糖コーヒー、清涼飲料、甘いカフェドリンクを、1日にどれくらい飲んでいるか書き出す。
- いつもの1杯を変える:水や無糖のお茶を選ぶ、サイズを小さくする、砂糖やシロップを減らす。
- だらだら飲み・食べを減らす:甘いものを口にする回数や時間帯も振り返る。
- 果汁と果物を同じものと考えない:「砂糖不使用」のジュースでも、果汁の糖はフリーシュガーに含まれると知っておく。
これらは、WHOなどの情報を日常生活に置き換えた実践例です。いきなり「甘いもの禁止」にするより、自分が無理なく続けられる変更を一つ選ぶほうが、取り組みやすいかもしれません。
歯科の食事指導が、体の健康にもつながる理由
複数の病気に共通するリスク因子に働きかけ、まとめて予防につなげようとする考え方を、「共通リスク因子アプローチ」と呼びます。
WHOも、口腔疾患とほかの非感染性疾患には、フリーシュガーの多い食生活、喫煙、飲酒など、共通するリスク因子があるとしています。(文献7)
その視点で考えると、歯科医院での説明も少し変わります。
「甘いものを減らすのは、むし歯を防ぐために大切です。特に普段の甘い飲み物を見直すことは、体全体の健康を考える食生活にもつながります。まず、毎日何を飲んでいるか一緒に確認してみましょう」
これは、今回の研究が歯科での食事指導そのものの効果を直接検証した、という意味ではありません。口の健康を入口に、生活習慣を見直す機会をつくれる、という予防の視点です。
フリーシュガーについてよくある質問
Q. フリーシュガーは、白砂糖のことですか?
白砂糖だけではありません。食品や飲料に加えた糖に加え、蜂蜜、シロップ、果汁、濃縮果汁に含まれる糖も対象です。「天然」「無添加」かどうかだけでは判断できません。(文献2)
Q. 果汁100%で砂糖不使用なら、気にしなくてよいですか?
砂糖を加えていなくても、果汁にもともと含まれる糖はフリーシュガーに含まれます。果物をそのまま食べることとは区別して、飲む量や頻度を考えましょう。ただし、この分類は、果汁と砂糖入り清涼飲料の健康への影響がすべて同じだという意味ではありません。(文献2)
Q. 果物や牛乳もやめたほうがよいのでしょうか?
WHOのフリーシュガー削減の推奨は、丸ごとの果物や牛乳にもともと含まれる糖を一括して減らすよう求めるものではありません。牛乳などに砂糖を加えた場合は、その加えた分が対象になります。(文献2)
Q. 同じ10gの砂糖なら、飲むより食べたほうが安全ですか?
今回のレビューだけから、そう断定することはできません。一緒に摂る栄養成分や満腹感、1日の総摂取量、食べる頻度などが違うためです。甘い飲み物はエネルギーが上乗せされやすい点に注意が必要ですが、お菓子の砂糖を気にしなくてよいわけではありません。
Q. 砂糖を減らせば、歯磨きはあまり必要ありませんか?
いいえ。食生活の見直しと、フッ化物配合歯磨剤を使った歯磨きなどの口腔ケアは、組み合わせて行うものです。どちらか一方だけで十分とは考えないでください。(文献4)
Q. この研究は「砂糖が18種類の病気を起こす」と証明したのですか?
いいえ。幅広い健康アウトカムについて既存のレビューを整理した研究です。研究の質や糖の定義にばらつきがあり、観察研究も含まれます。すべての病気について同じ強さの因果関係が確立した、という意味ではありません。(文献1)
まとめ:何を、どれくらい、どのように摂るか
歯科医院で「甘いものを減らしましょう」と言われる理由の中心には、むし歯予防があります。そして、砂糖の摂り方を見直すことは、体全体の健康を考える食生活とも重なっています。
ただし、「糖があるから全部同じ」ではありません。丸ごとの果物、果汁、牛乳、加糖飲料、お菓子では、食品の形も栄養成分も違います。
フリーシュガーは何に含まれるかを知り、特に普段の甘い飲み物の量と、だらだら飲み・食べの習慣を振り返る。
歯を守る食事指導を、生活全体を見直すきっかけにする。今回のレビューは、そんな歯科の役割を考える材料になりそうです。
参考にした主な資料
- Woelber JP, Wirth N, Dallmer-Zerbe A, Tennert C. The oral und systemic health risks of sugar consumption: an umbrella review. Clinical Oral Investigations. 2026;30:490. Published September 30, 2026. doi:10.1007/s00784-026-07191-1.
- World Health Organization. Guideline: Sugars intake for adults and children. 2015. あわせてWHOによる定義と推奨の解説を参照。
- World Health Organization. Reducing consumption of sugar-sweetened beverages to reduce the risk of unhealthy weight gain in adults.
- World Health Organization. Sugars and dental caries.
- Chelsea and Westminster Hospital NHS Foundation Trust. Diet advice for dental patients.
- NHS Dental Healthcare. Acid Erosion. 歯の酸蝕に関する患者向け資料。
- World Health Organization. Oral health.
本記事は一般的な健康情報の提供を目的としています。持病などで食事指導を受けている方は、ご自身に合った摂取量や食品の選び方について、担当の医療者にご相談ください。
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