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歯科衛生士業務の流れが変わる?厚労省の新制度案を解説

歯科衛生士業務の流れが、少し変わるかもしれません。

厚生労働省は2026年11月2日、歯科衛生士の業務のあり方について中間報告を公表しました。

今回注目したいのは、歯科医師があらかじめ作成した「手順書」に基づいて、研修を受けた歯科衛生士が一定の判断を行い、診療補助を実施できるようにする仕組みが検討されていることです。

では、歯科衛生士が新たにできるようになる処置は何なのでしょうか。私たちが受ける歯科診療はどう変わるのでしょうか。

すでに看護師に導入されている制度を参考に、分かりやすく解説します。

ひとことで言うと

歯科医師の手順書と所定の研修を前提に、歯科衛生士が一定の判断を伴う診療補助を行えるようにする方向性が示されました。

ただし、今回の発表によって新たな処置ができるようになったわけではありません。

具体的な対象行為、研修内容、制度の開始時期は、今後の検討事項です。

歯科医師の手順書に基づく歯科衛生士の診療補助のイメージ
歯科衛生士の診療補助について検討されている新たな仕組みのイメージ

この記事のポイント

  • 歯科衛生士が手順書に基づいて一定の判断を行う仕組みを検討
  • 参考になるのは、看護師の「特定行為研修制度」
  • 新たに対象となる具体的な処置はまだ決まっていない
  • 背景には高齢化と、在宅・施設・病院での口腔管理ニーズの増加がある
  • 患者の安全性を確保するための研修や実施条件が重要になる

歯科衛生士は、何ができるようになるの?

最も気になるのは、具体的にどのような処置ができるようになるのか、という点ではないでしょうか。

結論からいうと、今回の中間報告では、新たに対象となる具体的な処置はまだ確定していません。

現在、歯科衛生士は主に次の3つの業務を担っています。

主な業務 内容の例
歯科予防処置 歯石の除去、歯面への薬物塗布など
歯科診療の補助 歯科医師の指示に基づく診療補助
歯科保健指導 歯磨き指導や口腔衛生に関する助言など

今回検討されているのは、特に「歯科診療の補助」のあり方です。

歯科医師が患者の状態に応じて手順書を作成し、研修を受けた歯科衛生士が、患者の状態がその条件に当てはまるかを確認して診療補助を行う仕組みが想定されています。

つまり、歯科医師の指示が不要になるのではなく、事前に定められた条件の範囲で、歯科衛生士が一定の判断を行えるようにするという考え方です。

参考になるのが、看護師の「特定行為研修制度」

この仕組みを理解するうえで参考になるのが、看護師の「特定行為研修制度」です。

看護師には2015年から、所定の研修を修了した人が、医師または歯科医師の手順書に基づいて特定の診療補助を行う制度が設けられています。

対象となるのは、厚生労働省が定めた21区分38行為です。

例えば、次のような医療行為が含まれます。

分野 特定行為の例
脱水への対応 脱水症状に対する輸液による補正
呼吸管理 人工呼吸器の設定変更
気道管理 気管カニューレの交換
栄養管理 胃ろう・腸ろうカテーテルの交換
床ずれへの対応 血流のない壊死組織の除去
血糖管理 インスリン投与量の調整

もちろん、看護師であれば誰でも実施できるわけではありません。対象となる行為に応じた研修を修了し、手順書の条件を満たす必要があります。

例えば、患者に脱水症状が現れた場合

在宅療養中の患者に脱水が疑われる症状が現れた場面を考えてみましょう。

通常、看護師が患者の状態を確認し、医師に連絡して具体的な指示を受ける必要がある場面があります。

一方、特定行為研修を修了した看護師であれば、あらかじめ作成された手順書に従って患者の状態を評価し、条件に当てはまる場合には輸液による補正を実施できることがあります。

その都度、医師から個別の指示を受けるまで待たずに対応できる場面が生まれるわけです。

医師が手順書を作成し、研修を修了した看護師が患者の状態を判断して対応する流れ
看護師の特定行為研修制度の仕組み。歯科衛生士への同様の制度の導入は検討段階です。

ただし、看護師が医師から独立して診断や治療を行えるようになったわけではありません。

手順書の条件から外れる場合には、医師に連絡して指示を受けます。

また、看護師の38行為が、そのまま歯科衛生士にも認められるわけではありません。歯科衛生士にどのような行為を対象とするかは、別途検討する必要があります。

なぜ今、歯科衛生士の仕事を見直すの?

背景にあるのは、高齢化による歯科医療の需要の変化です。

歯科衛生士の仕事というと、歯科医院で歯石を除去したり、歯磨き指導をしたりする姿を思い浮かべる方が多いかもしれません。

しかし、歯科衛生士が必要とされる場所は、歯科医院だけではありません。

例えば、自分で十分に歯磨きができない高齢者、通院が難しい在宅療養中の患者、入院している患者などにも、専門的な口腔管理が求められています。

高齢化が進む中、こうしたニーズへの対応がますます重要になると考えられています。

高齢化による口腔ケアの需要増加と歯科医師・歯科衛生士の役割分担
高齢化により、在宅や施設、病院での口腔管理の重要性が高まっています。

一方で、日本では生産年齢人口の減少が見込まれています。

歯科医療を必要とする人が増える中で、医療を支える人材をどのように確保するかが課題となっています。

そのため、歯科医師と歯科衛生士が適切に役割を分担し、必要な歯科医療を届けられる体制を整えることが求められています。

歯科衛生士は将来、どのくらい必要になる?

歯科衛生士の業務の見直しと並んで重要なのが、人材の確保です。

2024年末時点で、実際に就業している歯科衛生士は14万9,579人でした。

今後は、高齢者の口腔管理や訪問歯科診療などへの対応も考えながら、必要な歯科衛生士数を検討する必要があります。

ただし、将来の必要人数は、医療需要の変化や働き方、業務効率化などの仮定によって変わります。

将来の必要人数の推計を、そのまま「不足する人数」と考えることはできません。

また、歯科衛生士の資格を持っていても、現在は就業していない人もいます。

新しく歯科衛生士を養成するだけでなく、離職を防ぐことや、出産・育児などで仕事を離れた人が復職しやすい環境を整えることも重要です。

私たちが受ける歯科診療はどう変わる?

今回の中間報告によって、患者が受ける歯科診療のルールが直ちに変わったわけではありません。

しかし、今後制度が整備されれば、歯科医師と歯科衛生士の役割分担が変わる可能性があります。

特に注目したいのは、訪問歯科診療や病院での口腔管理です。

通院が難しい高齢者や入院患者に対して、必要な口腔管理を継続して提供するには、歯科医療職の連携が欠かせません。

新たな仕組みが適切に整備されれば、歯科医療の提供体制を支える一つの方法になる可能性があります。

一方で、業務の効率化だけを優先してよいわけではありません。

患者の安全性を確保するために、どの行為を対象とし、どのような研修と実施条件を設けるかが重要です。

実際に患者の待ち時間が短縮するか、歯科医療へのアクセスが改善するかについても、制度の内容と導入後の検証が必要になります。

よくある質問

Q. 歯科衛生士が歯科医師と同じ治療をできるようになるのですか?

いいえ。今回検討されているのは、歯科医師の手順書に基づく診療補助の仕組みです。歯科衛生士が独立して診断や治療を行う制度ではありません。

Q. 歯科衛生士が新たにできる処置は何ですか?

現時点では、具体的な対象行為は決まっていません。今後、対象行為や必要な研修、法令整備などが検討されます。

Q. 歯科衛生士なら誰でも新制度の対象になりますか?

そのような仕組みは示されていません。検討されているのは、一定の研修を受けた歯科衛生士が、手順書に基づいて診療補助を行う仕組みです。

Q. いつから始まりますか?

制度の開始時期は決まっていません。今回の中間報告は制度の方向性を示すもので、施行を知らせるものではありません。

Q. 患者が今から何か準備する必要はありますか?

今回の発表を受けて、患者が特別な手続きをする必要はありません。現在の歯科診療で、処置の内容や担当者について疑問があれば、歯科医院で説明を求めることができます。

まとめ|歯科衛生士の仕事はどう変わっていくのか

今回の厚生労働省の中間報告で注目したいのは、歯科衛生士の仕事を単純に増やそうとしているのではなく、歯科医師との役割分担を見直そうとしている点です。

参考となる看護師の特定行為研修制度では、医師などが作成した手順書に基づき、研修を修了した看護師が一定の医療行為を判断して実施できる仕組みが整えられています。

歯科衛生士についても、これに類似した仕組みの導入が検討されています。

ただし、具体的な対象行為や研修内容、制度の開始時期はまだ決まっていません。

高齢化が進み、在宅や病院での口腔管理の重要性が高まる中、歯科衛生士がどのような役割を担っていくのか。

今後の制度設計では、業務の効率化だけでなく、患者の安全性と歯科医療の質をどのように確保するかが重要になります。

「誰が、どのような条件で、何をできるようになるのか」。

今後の厚生労働省の発表で、特に注目したいポイントです。

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参考文献・参考資料

  1. 厚生労働省.歯科衛生士の業務のあり方等に関する検討会.
    https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/newpage_77154.html
  2. 厚生労働省.歯科衛生士の業務のあり方等に関する検討会 中間報告.2026年11月.
    https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001765495.pdf
  3. 厚生労働省.特定行為に係る看護師の研修制度.
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077077.html
  4. 歯科衛生士法(昭和23年法律第204号).e-Gov法令検索.
    https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000204
  5. 保健師助産師看護師法(昭和23年法律第203号).e-Gov法令検索.
    https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000203

※本記事は2026年11月5日時点の公表資料をもとに作成しています。制度の対象行為や実施条件については、今後の厚生労働省の発表をご確認ください。

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shun
2017年卒業。100年時代の口腔を守るには良い治療と共に質の高い予防が絶対不可欠!と思い日々診療、研究に取り組んでいます。このサイトでは歯のお悩みに対して何がおきているのか、どういう治療が出来るのか、何故そうなってしまったのか、今後どうすれば予防出来るのかを分かりやすくお伝えできればと思います。よろしくお願い致します。
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