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インプラントとブリッジ、どちらを選ぶ?

濃紺の背景に、セラミックのクラウンとインプラントのアバットメントを並べた写真。第4講「ブリッジか、インプラントか」のアイキャッチ
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「インプラントにするか、ブリッジにするか」——1本の歯を失ったとき、いちばん迷うところだと思います。片方は手術が要り、費用もかかる。もう片方は短期間で終わり、保険が使えることもある。そう並べると、答えは決まっているようにも見えます。

ただ、この2つを分けるいちばん大きな違いは、そこではありません。両隣の健康な歯を削るかどうかです。この記事では、同じ土俵で比べた研究をもとに、正直にお話しします。

この記事の要点
① 10年後に残っている割合は、インプラント89.4%、従来型のブリッジ89.2%。ほとんど差はありません。
② 違うのは、起きることの中身です。ブリッジで起きるのは削った天然の歯に、インプラントで起きるのは上に載っている部品に。部品は作り直せますが、削った歯は元に戻りません。
③ 選択を分けるのは「どちらが優れているか」ではなく、両隣の歯が健康かどうかです。

10年後に残っている割合は、ほとんど同じです

いいところだけを並べても意味がないので、数字から入ります。10年後に残っている割合は、インプラント1本が89.4%、従来型のブリッジが89.2%。「インプラントのほうが長持ちします」と単純に言える差は、このデータの中にはありません。手直しを経験する方の割合も、インプラント側のほうが多く出ています。

治療の種類 5年後 10年後 5年間に何か手直しがあった方
インプラント1本で支えるかぶせ物 94.5% 89.4% —
両隣の天然の歯を削って支えるブリッジ 93.8% 89.2% 15.7%
インプラントで支えるブリッジ 95.2% 86.7% 38.7%
片側の天然の歯だけで支えるブリッジ(カンチレバー) 91.4% 80.3% 20.6%
▲ Pjetursson ら, Clinical Oral Implants Research 2007。ただしこれは2007年時点の分析で、その後の材料の進歩は含まれていません

違うのは「何が起きるか」です

ここから先が大切です。同じ研究の中で、従来型のブリッジで最も多かったのはむし歯と、歯の神経が失われること。インプラント側で多かったのはかぶせ物の欠け・ネジのゆるみ・外れでした。

つまり、ブリッジで起きるトラブルは、削った天然の歯そのものに起きます。一度むし歯になった歯、神経を失った歯は、元には戻りません。一方、インプラントで起きるトラブルの多くは、上に載っている部品に起きます。部品は直せますし、作り直せます。

数字でも見てみましょう。ブリッジの支台となった歯には、18%にむし歯が、11%に根の治療の必要が生じたという集計があります(Goodacre ら, 2003)。片側の天然の歯だけで支えるタイプでは、歯の神経が失われることが最も多い合併症で、10年で32.6%と報告されています(Pjetursson ら, 2004)。ブリッジは3本がつながった一体の構造になるため、歯と歯ぐきの境目やダミーの歯の裏側が清掃しにくくなります。これが、支台の歯にむし歯が起きやすい理由のひとつと考えられています。

1本の歯を失ったとき、2つの道があります10年後に残っている割合は、ほとんど変わりません。違うのは「何が起きるか」ですブリッジ削る歯 2本起きるのは削った天然の歯(むし歯・神経を失う)起きたあと削った歯は、元には戻りません清掃3本が連結し、境目が磨きにくいインプラント削る歯 0本起きるのは上に載っている部品(ゆるみ・欠け)起きたあと部品は直せる・作り直せる清掃1本ずつ独立し、間を通せるどちらが良いかではなく、両隣の歯が健康かどうかで決まります
▲ 10年後の生存率はほぼ同等です。選択を分けるのは、起きることの中身と、両隣の歯を削るかどうかです。

いちばん大きな違いは、両隣の歯を削るかどうかです

ブリッジとインプラントの比較。上段はブリッジ治療で、左が両隣の歯を削って支台歯に整えた状態、右がブリッジを装着した状態。下段はインプラント治療で、左が前歯を1本失った状態、右がインプラントで歯を入れた状態
▲ 上段=ブリッジ、下段=インプラント(いずれも別症例)。ブリッジは、左のように両隣の歯を削って土台にしてから、右のように橋をかけます。インプラントは、下段のように失った場所だけで治療が完結し、両隣の歯を土台にするために削る必要がありません

上段の左をご覧ください。健康だった両隣の歯が、ブリッジの支えにするために一回り小さく削られています。一度削った歯は、元には戻りません。下段と見比べると違いがはっきりします。インプラントは、失った場所だけで治療が完結します。削る量をごく少なく抑えられる接着ブリッジという方法もありますが、適応できる条件は限られます。

誤解のないように
ブリッジが悪い治療なのではありません。10年後の生存率はほぼ同等ですし、手術が要らない・期間が短い・費用が抑えられるという明確な利点があります。すでに大きな治療をした歯が両隣にある場合は、ブリッジのほうが合理的なこともあります。選択のポイントは「両隣の歯が健康かどうか」です。

もうひとつの選択肢——部分入れ歯

ここまでブリッジとインプラントを比べてきましたが、1本の歯を失ったときの選択肢は、じつはもうひとつあります。部分入れ歯です。

部分入れ歯は、両隣の歯を削りません。その代わり、バネ(クラスプ)を健康な歯にかけて支えますので、その歯には力がかかります。取り外して洗う手間があり、慣れるまで違和感が残る方もいます。費用は3つのなかでもっとも抑えやすく、保険の範囲でつくることもできます。

削らないのに手術も要らない、という組み合わせは、3つのなかで部分入れ歯だけです。「両隣の歯を削りたくない、でも手術は避けたい」という方には、まず検討していただく価値があります。

どれくらいもつのか、バネをかけた歯はその後どうなるのか。ここは数字を挙げてきちんとお伝えしたいので、3つを横並びで比べる記事をあらためて用意します。

将来の選択肢を、残しておけること

あまり語られない利点があります。インプラントを支えにした入れ歯(オーバーデンチャー)は、歯を全部失った方に対する治療として、国際的に「第一に選ばれるべき標準的な治療」と位置づけられています(McGill Consensus 2002、York Consensus 2009)。

下あごに2本のインプラントを埋入し、アタッチメントで総入れ歯を支えたインプラントオーバーデンチャーの一例。左は口腔内に見える留め具、右は入れ歯の内面にある受け側の部品
▲ 下あごの総入れ歯を、2本のインプラントで支えた一例(別症例)。左が歯ぐきから顔を出している留め具、右がその受け側にあたる入れ歯の内面です。この2か所でパチンと留まります

総入れ歯は、噛んだときに浮いたりずれたりすることがあります。下あごに2本のインプラントを入れて留めるだけで、その安定感は大きく変わります。ということは、もし将来ほかの歯を失っていくことがあっても、すでに入っているインプラントを、そのときの設計を支える柱として活かせる可能性があるということです。ブリッジのように両隣の歯を削って連結してしまうと、この選択肢は取りにくくなります。

ただし、必ずできるとは限りません
いま入っているインプラントが、そのまま入れ歯の支えに転用できるとは限りません。埋まっている位置や角度、部品の規格によって判断が変わりますし、入れ歯の留め具は消耗品なので定期的な交換も必要です。「必ずできる」ではなく「選択肢を先に残しておける」という言い方が正確です。

よくある質問(FAQ)

Q. 費用はどちらが安いですか?

A. ブリッジは条件によって保険が使えるため、初期の費用は抑えられることが多いです。ただし、支えにした歯がむし歯や神経の治療になれば、その分の費用と期間があとからかかります。目先の金額だけでなく、その後に何が起こりうるかも含めて比べてください。費用の内訳については第3講で詳しくお話ししています。

Q. 両隣の歯がすでに治療してある場合は、ブリッジでよいですか?

A. その場合はブリッジが合理的なこともあります。すでにかぶせ物が入っている歯なら、新たに削る量は少なくて済むからです。ただし、その歯がどれくらいもちそうかによって判断は変わります。レントゲンで根の状態を確認したうえで、担当の歯科医師と相談してください。

Q. ブリッジを入れたあとで、インプラントに変えられますか?

A. 変えること自体は可能です。ただし、削った歯が元に戻るわけではありません。一度削った歯は、インプラントに変えても削られたままです。だからこそ、最初の選択が大切になります。

あわせて読む
どのくらいもつのかは インプラントは何年もつ?
入れたあとに長持ちさせるには インプラントを長持ちさせるためにできること
費用の内訳は インプラントの費用は何にいくらかかる?【第3講】
数字の詳細は エビデンス編

参考にした主な文献

  1. Pjetursson BE, Brägger U, Lang NP, Zwahlen M. Comparison of survival and complication rates of tooth-supported FDPs and implant-supported FDPs and single crowns. Clin Oral Implants Res. 2007;18(Suppl 3):97-113.
  2. Tan K, Pjetursson BE, Lang NP, Chan ESY. A systematic review of the survival and complication rates of fixed partial dentures. Clin Oral Implants Res. 2004;15(6):654-666.
  3. Pjetursson BE, Tan K, Lang NP, Brägger U, Egger M, Zwahlen M. A systematic review of cantilever fixed partial dentures. Clin Oral Implants Res. 2004;15(6):667-676.
  4. Goodacre CJ, Bernal G, Rungcharassaeng K, Kan JYK. Clinical complications in fixed prosthodontics. J Prosthet Dent. 2003;90(1):31-41.
  5. Feine JS, Carlsson GE, Awad MA, et al. The McGill consensus statement on overdentures. Int J Oral Maxillofac Implants. 2002;17(4):601-602.
  6. Thomason JM, Feine J, Exley C, et al. Mandibular two implant-supported overdentures as the first choice standard of care for edentulous patients: the York Consensus Statement. Br Dent J. 2009;207(4):185-186.

執筆・監修:林 剛永(Taketo Hayashi / Kangyeong Lim)

日本・米国の両方の歯科医師免許を持つ現役歯科医師。インプラント治療で ABOI/ID と AO の Diplomate 認定を取得(DDS・MS・DABOI/ID・DAO・FAAID)。プロフィール詳細はこちら

著者は ABOI/ID(American Board of Oral Implantology/Implant Dentistry)と AO(Academy of Osseointegration)の Diplomate 公式名簿に掲載されています。名簿の掲載数は ABOI/ID が世界511名(うち日本国内3名)、AO が149名です(2026年9月時点)。ABOI/ID 公式名簿/AO 公式名簿

ABOUT ME
林剛永 D.D.S., M.S.
2015年 大阪大学歯学部卒業。大阪大学歯学部附属病院での研修、約4年間の開業医勤務を経て、2020年より米国カリフォルニア州 Loma Linda大学大学院に留学し、インプラント歯科学を専攻・修了。ABOI/ID(American Board of Oral Implantology/Implant Dentistry)と AO(Academy of Osseointegration)、双方の Diplomate 認定。現在は、インプラント治療を中心に臨床に従事しています。大学卒業後、各歯科医院によって方針や治療の幅や質にとても大きな違いがあることに驚き、患者さんが自分に最もあった治療を受けられるようになる一助になればと願い、当サイトを立ち上げました。
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