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歯科医師の年収は本当に高いのか?平均と中央値で比べてみた

収入と虫歯の関係のイラスト

「歯科医師って儲かるんでしょ?」

現役の歯科医師として働いていると、この言葉を数えきれないほどかけられてきました。
たしかにネットで検索すると「歯科医師の平均年収1,000万円超え」という景気の良い数字がたくさん出てきます。

歯医者さんのイラスト

でも、この”平均”という言葉には、実はちょっとしたトリックが隠れています。今回は、他の医療職とも比較しながら、歯科医師の年収の”本当の姿”を数字で見ていこうと思います。

まず、平均値と中央値の違いを3行で

本題に入る前に、簡単な前提を共有させてください。

  • 平均値:全員の年収を合計して人数で割った数字
  • 中央値:全員を年収順に並べたとき、ちょうど真ん中の人の数字
天秤のイラスト

例えば、9人の会社員のうち8人が年収400万円、社長1人だけ年収5,000万円だったとしましょう。

平均値は約911万円になりますが、中央値は400万円のままです。「平均911万円」と聞くと羽振りが良さそうに見えますが、実態はほとんどの人が400万円、というわけです。

一部の高収入者がいるだけで、平均値は簡単に釣り上がってしまう。この前提を踏まえて、歯科医師の年収を見ていきます。

医療職の年収、平均と中央値で比べてみた

複数の情報源が引用している厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(令和6年度)のデータをもとに、医師・歯科医師・薬剤師・看護師などの平均年収を並べてみました。

データ分析のイラスト
職種 推定平均年収(令和6年度) 調査対象の平均年齢
医師 1,338万円 44.1歳
歯科医師 1,136万円 36.2歳
獣医師 885万円
薬剤師 599万円 40.9歳
看護師 約520万円 41.2歳
歯科衛生士 406万円 35.9歳

※厚生労働省「令和6年度賃金構造基本統計調査」を出典とする二次情報源(主にキャリアガーデン)をもとにした推定値です。一次データ(e-Stat)は未確認のため、正確な数値はe-Statの職種別統計表でご確認ください。

【この表の数値についての注記】中央値(収入順に並べた際の真ん中の人の金額)は、政府統計から職種横断で一括比較できる形の公開資料が見当たらなかったため、上の表には掲載していません。ただし、歯科医師については後述の通り年次推移データがあり、そこから平均と中央値の間に無視できない差があることが読み取れます。

なお、上記の平均年収を見ても、医師・歯科医師・獣医師は薬剤師・看護師・歯科衛生士と比べて明らかに高水準です。ただし「平均」だけでは、一部の高年収層に引っ張られている可能性を見落としてしまいます。

年収400万円の勤務医と、年商12億円の理事長

正直な話、これは私自身の周りを見渡しても、まさにその通りだと感じます。

賃金格差のイラスト

私の知り合いには、36歳で勤務医として働き、年収400万円ほどという方もいれば、複数の医院を経営し、40代にして年商12億円ほどの歯科医療法人の理事長をされている方もいます。

同じ「歯科医師」という資格を持ちながら、この開きです。統計上の”平均1,136万円”という数字だけを見ていると想像しにくいですが、実際の現場感覚としては、この振れ幅の大きさこそが歯科医師という職業のリアルなのだと思います。

では、歯科医師の「普通の」年収はいくら?

過去の中央値の推移を見ると、こんな感じです。

年収中央値(企業規模10人以上)
2022年 791万円
2021年 695万円
2020年 690万円

平均だけを見ていると「歯科医師=1,000万円プレーヤー」というイメージになりますが、中央値ベースでは実態はもう少し低いところにあると考えられます。

【令和6年時点の中央値についての推定】上記の表は2020〜2022年のデータで止まっており、令和6年(2024年)時点の中央値は、当編集部が確認できた範囲の公開資料には見当たりませんでした。2021年から2022年にかけて695万円→791万円と1年で約100万円上昇するなど、年による振れ幅がもともと大きいため、単純な延長線上での予測は本来避けるべきですが、あえて目安を示すなら、800万円台後半〜900万円程度のレンジにある可能性はあります。ただし、これはあくまで粗い推定であり、実際の令和6年データによる裏付けは取れていない点にご留意ください。正確な数値を知りたい方は、e-Statで公開されている令和6年賃金構造基本統計調査の「職種(特掲)、所定内給与額階級別労働者数及び所定内給与額の分布特性値」という統計表をご確認ください。

まとめ

「歯科医師の年収は高いか?」という問いへの答えは、「平均で見るか、中央値で見るか」で大きく変わる、というのが正直なところです。

そして今回わかった興味深い点は、歯科医師という職業が、まさにこの”平均のマジック”の典型例だということです。中央値の年次推移を見る限り、歯科医師の実態はここ数年で徐々に上向いてはいるものの、世間でよく言われる「平均1,000万円超え」のイメージよりは控えめな水準にとどまっている可能性があります。

冒頭でお話しした、年収400万円の勤務医の知人と、年商12億円の理事長の知人。この両極端が同居しているのが、今の歯科医師という職業のリアルな姿だと思います。「歯科医師」という一言でひとくくりにできるほど、単純な世界ではないのです。

お辞儀をする男性のイラスト

数字だけを見ると味気ない年収の話も、こうして掘り下げてみると、歯科医師という仕事の奥行きが見えてくるようで、私自身書いていて新鮮な発見がありました。ここまで読んでくださり、ありがとうございました。今後も、現場にいるからこそ書ける記事をお届けできればと思います。

参考文献・出典

※本記事の年収データは、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」を出典とする複数の二次情報源を突き合わせて作成した推定値です。一次データ(e-Stat掲載の詳細統計表)を編集部で直接確認できていない項目については、本文中にその旨を明記しています。より正確な数値が必要な場合は、上記e-Statのリンクから統計表を直接ご確認いただくことをおすすめします。

執筆・監修:林 剛永(Taketo Hayashi / Kangyeong Lim)

日本・米国の両方の歯科医師免許を持つ現役歯科医師。インプラント治療で ABOI/ID と AO の Diplomate 認定を取得(DDS・MS・DABOI/ID・DAO・FAAID)。プロフィール詳細はこちら

著者は ABOI/ID(American Board of Oral Implantology/Implant Dentistry)と AO(Academy of Osseointegration)の Diplomate 公式名簿に掲載されています。名簿の掲載数は ABOI/ID が世界511名(うち日本国内3名)、AO が149名です(2026年9月時点)。ABOI/ID 公式名簿AO 公式名簿

※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。気になる症状がある場合は歯科医院にご相談ください。

ABOUT ME
林剛永 D.D.S., M.S.
2015年 大阪大学歯学部卒業。大阪大学歯学部附属病院での研修、約4年間の開業医勤務を経て、2020年より米国カリフォルニア州 Loma Linda大学大学院に留学し、インプラント歯科学を専攻・修了。ABOI/ID(American Board of Oral Implantology/Implant Dentistry)と AO(Academy of Osseointegration)、双方の Diplomate 認定。現在は、インプラント治療を中心に臨床に従事しています。大学卒業後、各歯科医院によって方針や治療の幅や質にとても大きな違いがあることに驚き、患者さんが自分に最もあった治療を受けられるようになる一助になればと願い、当サイトを立ち上げました。
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