あけましておめでとうございます。年末年始は歯医者が休診でお悩みの方も多いでしょう。
大学病院などは年末年始でも歯科救急対応しているところが多いので是非チェックしてくださいね。
目次
フッ素ってなんだろう
さて、今回はむしば菌にとって天敵となるフッ素についての話です。
フッ素が虫歯予防に有効だとわかり始めたのは1930年ごろといわれています。アメリカのロッキー山脈のふもとに住むコロラドスプリングス住民は岩石に含まれるフッ素を多く含んだ水を飲んでいました。彼らの歯にむし歯が少ないことからフッ化物の有用性が発見されたといわれています。
フッ素によるむし歯予防のメカニズムは大きく3つあるといわれています。
フッ素の虫歯予防メカニズム
歯を強化する
フッ素はハロゲン族といって非常に反応性が高く、歯の成分ヒドロキシアパタイトに反応してフルオロアパタイトに変換します。このフルオロアパタイトはヒドロキシアパタイトよりも非常に強い構造をしているためむし歯菌のだす酸にも溶けにくくなります。
穴になってない初期むし歯を再石灰化する
初期むし歯とはむしば菌の出す酸によってミネラルが溶けだした状態で見た目には透明感がなく白っぽい状態でホワイトスポットといいます。この状態であればフッ素を塗ることで再石灰化が進みホワイトスポットを元に戻してくれます。
むしば菌の力を弱める
フッ素はむしば菌が糖質を使って酸を出す解糖系に対する抗酵素作用によってむしば菌が酸を出すチカラを弱めることができます。
フッ素の持つこれらの力によりむし歯予防に効果があり、積極的にフッ素を利用することが勧められています。
近年では歯磨き粉に含められるフッ素量が1500ppmと以前の1.5倍になりアメリカや欧米と比較するとまだまだ濃度は低いですがより高い虫歯予防効果が期待できます。
フッ素の利用方法
毎日の歯磨き粉での利用
現在、フッ素含有歯磨き粉を使用している割合は90%以上といわれています。フッ素含有歯磨き粉の普及は近年の虫歯の減少の一番の理由であると私は考えています。歯磨き粉でフッ素を利用する際に気を付けることは1歳-5歳の子供への使用方法です。どんなものでも同じですが、フッ素は体内に多量に入ると毒性が生じます。1-5歳の子供は体が小さく、毒性が生じるフッ素量が少なくぶくぶくうがいができないうちは高濃度のフッ素含有歯磨き粉を使用するのはお勧めできません。
日本口腔衛生学会フッ化物応用委員会によると
0-2歳ではチューブタイプの普通の歯磨き粉であれば低濃度(500ppm)の歯磨き粉を切った爪程度、
3-5歳では5mm程度の量を出して使用してください。
6-14歳では1000ppmのチューブ歯磨き粉を1cm程度出して使用してください。
15歳以上では1500ppmの高濃度のものを2cm程度出して使用してください。
また、最近は泡タイプ(foamタイプ)の歯磨き粉が出ています。これは少量でもしっかりと口全体に広がるため0歳から1000ppmのものを利用できます。
歯磨きが終わった後のうがいは1回だけにして、その後1-2時間程度は飲食しないようにするとより効果が高まります。
うがい薬(フッ化物洗口)としての利用
フッ素うがいは学校などで集団で行うと最も虫歯予防の費用対効果が高い方法として知られていますが、2012年では日本で実施している割合は4-14歳で7.1%(NPO法人日F会しらべ)となっています。この方法は1週間に1度900ppmのフッ素うがい薬でうがいをする、もしくは毎日225-450ppmでうがいをするというものです。この方法は疫学的にも効果が証明されており、2003年のコクランレビューにおいて対象者総計1万4600人で26%の予防効果が認められています。ただしこの方法はぶくぶくうがいのできる4歳以上とされているため永久歯の予防に限られます。乳歯の虫歯予防は毎日の歯磨き粉、歯医者さんでのフッ素塗にて予防してくださいね。
歯医者さんでのフッ素塗布
歯医者さんでフッ素を塗ってもらったことはありますか?歯医者さんでは9000ppmの高濃度のフッ素を使用でき、コクランレビューでも7747人に対し28%う蝕予防効果が認められています。また日本の小児の薬6割以上が実施経験があり現在むし歯が減ってきている理由のひとつとして考えられています。
まとめ
フッ素はむしば菌の天敵であり、歯のヒーローです。多量に飲んだりすると害はありますが使用方法を正しく守っている限り非常に高い虫歯予防効果を発揮してくれます。とくに歯磨きがうまくないお子さんや虫歯のできやすいお子さんには歯磨き粉は泡タイプで1000ppmのものにしたり、歯医者さんでのフッ素塗布や、4歳以上のお子さんであればフッ素うがいなども検討されてはいいかと思います。ただし、あなの空いてしまった虫歯に関してはフッ素は効果を発揮しませんので見つけ次第早めに歯医者さんに相談してください。むし歯については以下のリンク
むし歯って何?
を参考にしてください。それでは。
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