歯科放射線

デンタル・パノラマ・歯科用CTの違いは?歯のレントゲンの使い分けと被ばくを歯科医師が解説

歯医者さんで「今日はパノラマを撮りますね」「ここはCTで見てみましょう」と言われて、”どう違うの?”と思ったことはありませんか。歯のレントゲンにはいくつか種類があり、目的によって使い分けられています。仕組みがわかると、なぜその撮影が必要なのかが納得できて、余計な不安もやわらぎます。

この記事では、代表的な3種類(デンタル・パノラマ・歯科用CT)の違いと、それぞれの被ばく量を、一次資料の数値とともにやさしく解説します。

この記事の要点

  • 歯のレントゲンは主にデンタル・パノラマ・歯科用CT(CBCT)の3種類。目的に応じて使い分けます
  • 被ばくはデンタルが最少(約1〜数µSv)、パノラマは約14〜24µSv、CBCTは条件で変動(小照射野で平均約84µSv)。いずれも自然放射線の数日〜2週間分ほどです。
  • CT(CBCT)は必要な場合に限って使うのが原則。むし歯の定期チェックに立体撮影は使いません。

歯のレントゲンには3種類ある

歯のレントゲンには、大きく分けてデンタル・パノラマ・歯科用CT(CBCT)の3つがあります。まずは、それぞれがどんな画像なのか、イメージで見てみましょう。

歯のレントゲン3種類のイメージ。左=デンタルで1本の歯を拡大、中央=パノラマで上下の歯全体、右=歯科用CT(CBCT)で立体的にあごの一部を表したイラスト。
▲ 左から デンタル・パノラマ・歯科用CT(CBCT)のイメージ

写す範囲・見え方・用途・被ばく量を並べると、違いがはっきりします。

歯のレントゲン3種類の使い分け比較表。写す範囲・見え方・主な用途・被ばくの目安を比較。デンタルは1〜数歯で約1〜数µSv、パノラマは全体で約14〜24µSv、CBCTは立体で小照射野平均約84µSv。
▲ デンタル・パノラマ・歯科用CTの使い分け(代表値)

それぞれ、どんなときに使うの?

デンタルは、小さなフィルムやセンサーを口の中に入れて、1〜数本の歯を細かく写します。最も高精細で、被ばくもいちばん少ない撮影です。むし歯の深さ、根の先の状態、歯を支える骨の様子など、”ピンポイントで詳しく見たい”ときに使います。

パノラマは、機械が頭のまわりをぐるっと回り、上下の歯とあご全体を1枚に写します。全体のバランス、親知らずの向き、顎の骨の状態などを一度に把握できます。ただし広く写すぶん、細かいところはデンタルにやや劣ります。

歯科用CT(CBCT/コーンビームCT)は、立体(3D)で確認できるのが特徴です。ふつうのレントゲン(平面)ではわかりにくい、埋まった親知らずと神経の位置関係、インプラントを入れる骨の厚み、複雑な形の根などを立体的に把握できます。

気になる被ばく量は?

放射線防護の代表的な研究によると、実効線量の目安は次のとおりです。デンタルは数µSv(バイトウィング4枚で約5.0µSv)、パノラマは約14〜24µSv(Ludlow ら, JADA 2008)。歯科用CTは小照射野で平均約84µSv(5〜652µSv、Ludlow ら, Dentomaxillofac Radiol 2015)と、装置や撮影範囲で幅があります。

いずれも、私たちが日常で自然に浴びている放射線(日本で年間約2.1mSv=1日あたり約6.6µSv)の数日〜2週間分ほど。詳しい比較は「歯科レントゲンの被ばく量は安全?」で図解しています。

CT(CBCT)は「必要なときだけ」

立体で見えるCTは便利ですが、むし歯の定期チェックのような場面では使いません。国際的なガイドライン(AAOMR、欧州のSEDENTEXCT)でも、CBCTは適応を限定し、ふつうの2次元撮影で十分な場合には使わないことがすすめられています。埋伏した親知らずの抜歯やインプラントなど、立体情報が診断・治療に本当に必要なときに選ばれる撮影です。「必要な検査を、必要な範囲だけ、できるだけ少ない線量で」——これがレントゲン全体に共通する原則です。

安心して読んでほしいこと
どの撮影も、目的に合わせて「いちばん適した方法」を選んでいます。被ばくは1回あたりごくわずかで、通常の診療で心配するような量ではありません。撮る目的が気になるときは、遠慮なく「これは何のための撮影ですか?」と尋ねてみてください。

よくある質問(FAQ)

Q. パノラマがあれば、デンタルは要らないのでは?

A. いいえ。パノラマは全体像に向きますが、細かい部分はデンタルのほうが鮮明です。むし歯や根の先を詳しく見るにはデンタルが適しており、目的が違います。

Q. CTを撮ると言われました。被ばくが心配です。

A. CBCTは条件で線量に幅がありますが、小照射野なら自然放射線の2週間分ほど。埋伏歯と神経、インプラントなど立体情報が必要な場合に限って選ばれます。目的を確認すると安心です。

Q. 医科のCTと歯科用CTは同じ?

A. 別の装置です。歯科用CT(CBCT)は歯やあごに特化し、医科の全身用CTより線量を抑えやすいのが特徴です。

Q. どの撮影にするかは誰が決めるの?

A. 歯科医師が診断の目的に応じて判断します。同じ症状でも、見たいものによって選ぶ撮影が変わります。

参考にした主な文献

  1. Ludlow JB, Davies-Ludlow LE, White SC. Patient risk related to common dental radiographic examinations. J Am Dent Assoc. 2008;139(9):1237-1243(デンタル・パノラマの実効線量).
  2. Ludlow JB, Timothy R, Walker C, et al. Effective dose of dental CBCT—a meta analysis of published data and additional data for nine CBCT units. Dentomaxillofac Radiol. 2015;44(1):20140197(CBCTの実効線量).
  3. SEDENTEXCT / European Commission. Radiation Protection No. 172: Cone Beam CT for Dental and Maxillofacial Radiology(CBCTの適応・防護の指針).
  4. American Academy of Oral and Maxillofacial Radiology(CBCTの適応に関する見解).
あわせて読みたい
被ばく量の全体像は「歯科レントゲンの被ばく量は安全?」、妊娠中の疑問は「妊娠中に歯のレントゲンは大丈夫?」で解説しています。

この記事は一般的な情報提供です。 個別の検査の必要性は、担当の歯科医師にご相談ください。

執筆・監修:林 剛永(Kangyeong Lim / Taketo Hayashi)DDS, MS, DABOI/ID, DAO・平和歯科医院(愛知県西尾市)|著者プロフィールは運営者情報ページをご覧ください。

ABOUT ME
林剛永 D.D.S., M.S., DABOI
2015年 大阪大学歯学部卒業。大阪大学歯学部附属病院での研修、約4年間の開業医勤務を経て、2020年より米国カリフォルニア州 Loma Linda大学大学院に留学し、インプラント歯科学を専攻・修了。ABOI/ID(米国口腔インプラント学会)ボード認定医(Diplomate)。現在は、インプラント治療を中心に臨床に従事しています。大学卒業後、各歯科医院によって方針や治療の幅や質にとても大きな違いがあることに驚き、患者さんが自分に最もあった治療を受けられるようになる一助になればと願い、当サイトを立ち上げました。
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