みなさん、こんにちは! お元気でしょうか?
今回から、どうやってアメリカで歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士になるのかを説明していきます。まずは第一弾、歯科医師編です。(以下、1ドル=150円として換算します。)
この記事の要点
- アメリカで臨床歯科医師として働く道は大きく4つ:①デンタルスクール卒業 ②ASPID/IDPプログラム ③レジデンシー ④ファカルティ。州によって要件が異なる。
- 外国(日本を含む)で免許があれば②〜④が現実的。①は最も年月と学費がかかるため、通常は選ばない。
- INBDE(筆記)に受かるだけでは不十分。臨床(実技)試験や、州によっては法と倫理の試験なども必要。
目次
アメリカで歯科医師として働くには
アメリカで歯科医師として働く方法は複数あり、州によって法律が異なるため一律ではありません。研究者として働く場合はまた別の道がありますが、ここでは臨床歯科医師として働く方法に絞ります。一般的には次の4つです。
- 歯科学校(デンタルスクール)を卒業する
- ASPID/IDP プログラムを卒業する
- レジデンシー(Residency)プログラムを卒業する
- ファカルティ(教員)として働く
どの国でも歯科医師免許を取ったことがない場合は①しかありませんが、外国(日本を含む)で歯科医師免許を持っている場合は、主にこの4つが一般的な選択肢になります。
なお、アメリカの歯科医師国家試験(INBDE)は外国の歯学部卒でも受験可能ですが、合格するだけでは臨床医として働くには不十分です。通常はさらに Regional の実技試験に合格し、州によっては Law and Ethics(法と倫理)などの試験にも合格して、はじめて免許を申請できます。
1. 歯科学校(デンタルスクール)を卒業する
これは通常最も年月と学費がかかる方法です。海外ですでに歯科医師免許を持っているなら、②以降を選ぶのが普通です。高校卒業後、アメリカで歯科医師になるまでには通常8年かかります(出典1)。なぜ8年かというと、デンタルスクールに入るには学士号(4年制大学の卒業)が前提だからです。
① 大学(カレッジ)で学士号を取る
学士号の取得には通常4年間、大学(カレッジ)で約120単位を取ります。1クラス3単位が一般的なので、120単位はおおよそ40科目に相当します。専攻はどれでもよいとされますが、生物科学系(化学・物理・生物)を選ぶことが多いです。
② DAT(Dental Admission Test)
学士号取得後、DAT(Dental Admission Test)を受験し、各歯科学校の基準以上のスコアを取る必要があります。DATは1〜30で採点され、平均20以上あれば多くのデンタルスクールに入れるとされます(出典2)。ただし各校が独自の要件を持つため、必ず確認が必要です。判定はDATだけでなく、GPA(平均3.5以上が目安)・推薦状など他の要素も見られます。要するに、すべてを高水準で揃えないと入学は難しい、ということです。
③ 歯科学校(デンタルスクール)
入学できたら、さらに4年間、歯科医師になるための教育を受けます。無事修了すると DDS(Doctor of Dental Surgery)または DMD(Doctor of Dental Medicine)の学位を取得します。両者に実質的な違いはなく、学校によって名称が違うだけです(出典3)。最初の2年は講義中心、後半2年は臨床実習が中心です。
費用は公立・私立で差がありますが、4年間でおおよそ $150,000〜$353,000(約2,250万〜5,300万円)ほど必要とされます。日本では国立大学なら6年で約350万円(入学金込み)ほどですから、金銭的なハードルはかなり高いと言えます。
④ 試験(INBDE・臨床試験)
卒業して終わりではありません。免許取得には、まず国家試験 INBDE(Integrated National Board Dental Examination)に合格します。かつては NBDE(Part 1/Part 2)でしたが、2020年8月に統合され、現在は完全に INBDE のみです。以前より臨床的な問題の割合が増え、すでに海外で臨床経験のある受験者には有利になりました。すべて選択式のコンピュータ試験(日本のCBTに近い)で、実技はありません。スコアは49〜99で、75以上が合格とされます(実際の点数は非公表)(出典4)。
筆者が受けた実感としては、極端に難しい印象はなく、「基本的な知識が身についているかの確認テスト」という感じでシンプルな問題が中心でした(ただし、設問に使われる口腔内写真の質が悪く、意図が読み取りにくい場面はしばしばありました)。
INBDEに合格したら、次は臨床(実技)試験です。実際の患者またはマネキンで治療を行い、基本的な診断・診療技術を確認します。コロナ以降はマネキン受験が許可され、今はほとんどの受験生がマネキンを選びます(非公開データでは、患者を連れて受験する人の合格率がやや高いという話もあります)。臨床試験は次の3機関のいずれかが実施します。
- CDCA-WREB-CITA
- Central Regional Dental Testing Services(CRDTS)
- States Resources for Testing and Assessments(SRTA)
免許を取りたい州に合わせて適切な試験を受け、合格する必要があります。なおデラウェア州は独自試験、ニューヨーク州は1年間のレジデンシー修了が必要です(出典5)。州によっては、CPR・応急手当の認定、法律・倫理の試験、背景調査や面接など、追加の要件が課される場合もあります。
こうして希望の州の要件をすべて満たすと、ようやく免許を取得し、歯科医師として働けます。ただしクリニックによっては経験年数・スキル・専門性などの追加条件を求められることもあるので、自分に合った職場選びも大切です。
次回は 「② ASPID/IDP プログラムを卒業する」 について解説します。お楽しみに!
参考
- Shemmassian Academic Consulting「How to Become a Dentist(歯科医師になるのに何年かかる?)」 リンク
- ADA「DAT scores(DATの要件)」 リンク
- Indeed「How to become a dentist(DDSとDMDの違い)」 リンク
- Kaplan「About the INBDE(INBDEの要件)」 リンク
- ADA「Student licensure(州ごとの免許要件)」 リンク
執筆・監修:林 剛永(Kangyeong Lim / Taketo Hayashi)DDS, MS, DABOI/ID, DAO・平和歯科医院(愛知県西尾市) | 著者プロフィールを見る
大阪大学歯学部卒、米国 California 州 Loma Linda University Implant Residency 修了(DDS, MS)。日本歯科医師免許・米国歯科医師免許保持。米国インプラント学会(ABOI)認定専門医。制度・費用・試験要件は改定されることがあります(本記事の元情報は2023年時点)。出願・受験・免許申請の最終判断は、各州歯科委員会・ADA・各試験機関等の公式情報で必ずご確認ください。1ドル=150円で換算。
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