皆さん、こんにちは! 今回は自己紹介でお伝えしたアメリカ歯科界のリアルを、歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士・歯科助手の「数」という切り口で、日本と比べながら見ていきます。数字はすべて公的な一次統計(米国はADA・BLS、日本は厚生労働省)の最新版に更新しています。
この記事の要点
- 米国の歯科医師は約20.2万人(2023年)で、絶対数は日本(約10.5万人)の約2倍。ただし人口10万人あたりで見ると米国は約60人、日本は約82人と、人口比では日本のほうが多い。米国は全体では不足傾向で、歯科大学の新設が続く。
- 歯科衛生士は米国で歯科医師とほぼ1:1(米国 約22万人)。歯科技工士は日米ほぼ同水準だが、歯科医師数あたりでは米国のほうが明らかに少ない。
- 米国は州・地域による偏在が大きく、増員余地があるぶん歯科医療者にはチャンスも多い。
歯科医師数
米国の歯科医師は約20.2万人。人口あたりでは日本のほうが多い、というのが実像です。
アメリカ歯科医師会(American Dental Association=ADA)のヘルスポリシー研究所の集計では、2023年時点で米国の歯科医師は 202,304人。これはアメリカ人10万人あたり約60人の歯科医師がいる計算です※1。

歯科医師数が最も多い州はカリフォルニア州(30,280人)、次いでテキサス州(16,522人)、ニューヨーク州(14,146人)、フロリダ州(12,350人)です※2。やはりロサンゼルス・ヒューストン・ニューヨーク・マイアミといった大都市に多く在籍しています。
一方、日本では厚生労働省によると令和4年(2022年)で歯科医師は 105,267人、人口10万対では約82人(81.6人)で、人口あたりで見ると日本のほうが多いという結果です※3。
「日本は歯科医師過剰」と言われて久しく、実際に大都市部では過剰な地域もあります。ただ人口10万人あたりで見ると、むしろ日本(約82人)のほうが米国(約60人)より多いのが事実です。米国は全体としては歯科医師が不足しており、現在も歯科大学の新設で増員が進んでいます。


つまり、州や地域によって歯科医師数の差が大きく、あまり人気のない地域では歯科医療が十分に行き渡っていない、という格差があります。日本でも田舎では歯科医師が不足している地域があり、状況は似ているかもしれません。ただ、全体として増員が必要という点では、日本で働くよりアメリカで働くほうがチャンスが多く訪れる可能性が高いと言えるでしょう。
歯科衛生士数
米国では、歯科衛生士の数が歯科医師とほぼ同じ規模です。
アメリカ労働統計局(U.S. Bureau of Labor Statistics=BLS)によれば、2024年5月時点で雇用されている歯科衛生士は 221,600人で、歯科医師と歯科衛生士の比率はほぼ1:1(わずかに衛生士が多い)です※4。
現場では「患者の流入を安全にさばくには1医院あたり2人の歯科衛生士が欲しい(院長1人+代診1人+歯科衛生士2人でバランスが取れる)」という声も聞かれます。これは公式な基準ではなくあくまで運営上の目安・現場の実感ですが※5、歯科衛生士の数は歯科医師の増加に伴って増える見込みで、今後も需要は高いといえます。
一方、日本の歯科衛生士は令和6年末(2024年)の厚生労働省調べで 149,579人(前回・令和4年から約3.0%増)で、歯科医師あたりの歯科衛生士数はアメリカより多いです※6。ところが、日本のほうが「歯科衛生士不足」が叫ばれる印象が強い。これはおそらく保険制度の違いが大きな原因です。日本の保険制度では歯科衛生士が経営面でも重要なため、多くの衛生士を抱える大規模医院と、募集しても来てもらえない医院の格差が大きく、高い離職率とも相まって、実数の割に不足感が強く語られているのではないでしょうか。いずれにせよ、日米どちらでも歯科衛生士の需要は今後も高いといえます。
歯科技工士数
歯科医師数あたりで見ると、米国の歯科技工士は日本よりかなり少ないのが特徴です。
BLSの調べでは、2024年5月時点で雇用されている歯科技工士は 35,200人※7。一方、日本の歯科技工士は令和6年末(2024年)の厚生労働省調べで 31,733人です※8。絶対数はほぼ同水準(米国がやや多い)ですが、米国(米国の歯科医師数は日本の約2倍。つまり歯科医師1人あたりで見ると、米国の歯科技工士は日本の半分程度しかいない計算になります。
ちなみに、日本の歯科技工士は国家資格ですが、アメリカでは歯科技工士になるのに資格が必ずしも必要ありません。CDT(Certified Dental Technician)という資格があり、ADAも取得を積極的に推奨していますが、日本のように「国家資格がなければできない」ものではありません。そのため個人的な感覚としては、平均的な歯科技工士のレベルは日本のほうが遥かに高いと感じます。専門的な教育と適切なトレーニングを受けた日本の歯科技工士は、世界でも十分に評価されます。
私も日本の歯科医院で歯科医師として働き、歯科技工士さんと関わる機会が多くありましたが、残念ながら日本で働く多くの歯科技工士さんは報酬面で適切に評価されていないように感じます。担い手が減り続けているのが現状で、実際に日本の歯科技工士数は平成28年(2016年)の34,640人から令和:年(2024年)の31,733人へと減少しています※8。日本の歯科技工士が世界に進出できる環境を整えられれば、地位が向上し、若者にとっても魅力的な職業になり、世界的な歯科医療の向上にもつながるのではないか――そのために自分に何ができるか、日々考えています。
歯科助手数
最後に歯科助手です。アメリカでは2024年5月時点で歯科助手(Dental Assistants)が 381,900人雇用されており※9、歯科医療スタッフの中で最も人数が多い職種です。州によっては所定の講習・資格でレントゲン撮影など一定の医療行為が認められる点も、日本と大きく異なります。
日本の「歯科助手」は国家資格ではなく、全国的な就業者統計も整備されていません。そのため単純な人数比較は難しいのですが、無資格でも担える業務の範囲が日米で異なることは知っておくとよいでしょう。
まとめ
日本とアメリカでは規模がまったく異なるので単純な人数比較は難しいですが、歯科技工士の数が(歯科医師比で)圧倒的に少ないのが米国の特徴です。一定基準の教育を受けて国家資格を取る日本の技工士は、海外でも需要が高いことは想像に難くありません。日本の歯科医療従事者がさらに国際的に活躍できるようになることで、世界にも日本にも良い結果がもたらされるよう、今後も情報を発信していきます。
次回は、気になる「アメリカの歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士の年収」についてです。お楽しみに!
参考
- American Dental Association, Health Policy Institute「Supply of Dentists in the U.S.(Dentist Workforce)」 https://www.ada.org/resources/research/health-policy-institute/dentist-workforce
- American Dental Association, Health Policy Institute「State-Level Data(州別歯科医師数, 2023)」 https://www.ada.org/resources/research/health-policy-institute/state-level-data
- 厚生労働省「令和4(2022)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/22/index.html
- U.S. Bureau of Labor Statistics, OEWS「Dental Hygienists(29-1292, May 2024)」 https://www.bls.gov/oes/current/oes291292.htm
- 院内運営上の目安(現場の実感)に基づく記述であり、公的基準ではありません。
- 厚生労働省「令和6(2024)年 衛生行政報例(就業医療関係者)の概況」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/24/index.html
- U.S. Bureau of Labor Statistics, OEWS「Dental Laboratory Technicians(51-9081, May 2024)」 https://www.bls.gov/oes/current/oes519081.htm
- 厚生労働省「令和6(2024)年 衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」(就業歯科技工士数)/平成28年の値は同「歯科技工士数(平成28年度)」による https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/24/index.html
- U.S. Bureau of Labor Statistics, OEWS「Dental Assistants(31-9091, May 2024)」 https://www.bls.gov/oes/current/oes319091.htm
執筆・監修:林 剛水(Kangyeong Lim / Taketo Hayashi)DDS, MS, DABOI/ID, FAAID, DAO 〜 日本・米国歯科医師/口腔インプラント Diplomate(ABOI/ID・AO) 〜 著者プロフィールを見る
大阪大学歯学部卒、米国 California 州 Loma Linda University Implant Residency 修了(DDS, MS)。日本歯科医師免許・米国歯科医師免許保持。米国インプラント学会(ABOI)認定専門医。
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