皆さん、こんにちは! これまでは、アメリカで歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士になる方法を大まかに紹介してきました。ここからは、実際にどうやって免許を取得するのか、その流れをもう少し詳しく見ていきます。今回は、私自身が歯科医師免許を取得した方法――すなわちレジデンシー(大学院)を経て免許を取得する流れを解説します。
この記事の要点
- 大まかな流れは①レジデンシー修了 →②筆記INBDE →③実技ADEX →④州へ免許申請の4ステップ(①②は順不同)。
- 最大の関門は実技試験(ADEX)。保存修復で0.5mm刻みの精度を要求され、著者が受けた2023年は合格率30%を切る会場もあった。
- 免許は州ごとに申請(全国共通ではない)。著者はイリノイ州で申請から発行まで約5か月、その間は歯科助手としてしか働けなかった。
目次
大まかな流れ
免許取得までの流れは、次の4つです。実にシンプル!
- レジデンシー(大学院)を卒業する
- 筆記試験(INBDE)に合格する
- 実技試験(ADEX)に合格する
- 自分の働きたい州に歯科医師免許の申請を行う
なお、③実技試験(ADEX)は学校を卒業しないと受験資格がありませんが、②筆記試験(INBDE)は卒業前でも受験できるため、①と②は順不同です。流れ自体はシンプルですが、それぞれのステップにハードルが存在します。
1. レジデンシーを卒業する
まず、レジデンシーに受かること自体が大変です。アメリカのレジデンシーはどの学校・プログラムも人気で、通常は全世界から毎年100人以上の応募が来ます。その中から書類選考・面接・実技試験を突破し、プログラムにもよりますがだいたい年に3人ほどに絞られます。受かることがまず最初の難関です。加えて、学費や生活費も大きなハードルになります。
2. 筆記試験(INBDE)に合格する
これに関しては、勉強時間の確保が一番のハードルでした。日本の歯科医師免許を持っている(特に近年の)歯科医師であれば試験内容自体が極端に難しいわけではありませんが、専門用語をすべて英語で覚え直し、細かな知識を補充することを考えると、平均して1か月以上はしっかり勉強する必要があります。仕事やレジデンシーのカリキュラムをこなしながら勉強時間を捻出するのは、少しハードルが高いといえます。

3. 実技試験(ADEX)に合格する
私自身は、米国歯科医師免許を取得するうえでこれが一番ハードルが高かったと感じました。日本では筆記試験に受かり、臨床実習に上がるための OSCE をクリアすれば、あとは手技的に大きな問題はありませんでした。ところがアメリカでは実技試験をクリアしなければならず、その基準は非常に細かく設定されていて、保存修復などでは0.5mm刻みの精度を要求されます。
ちなみに私が受験したときは、ルーペは使えますがマイクロスコープは基本的に使用不可でした(アメリカでは日本と違い、エンド専門医以外がマイクロスコープを使うのは一般的ではありません)。試験で使う器具も自分で用意する必要があり、すでに器具が揃っている学部生(Undergrad Students)と違って、器具を揃えること自体もハードルの一つでした。
とはいえ、コロナ以降はマネキン上で実技試験ができるようになり、患者さんを自分で用意する必要がなくなった点は非常に楽になりました。その分、審査基準は一層厳しくなり、私が受けた2023年は合格率30%を切る会場もあったそうです(^^;)。実技試験の項目は次の5つです。
- Diagnostic Skills Examination
- Restorative(Anterior/Posterior)
- Endodontic
- Prosthodontic
- Periodontal
2〜5は通常2日にわたって同じ会場で受験し、1.は別日に違う会場で行います。多くは1.を先に終わらせてから他を準備するようです。すべてに合格すると、通知と Certificate がメールで届きます(こちらも合否のみで点数は非公開)。

4. 働きたい州に歯科医師免許を申請する
念願かなってすべての試験に合格したら、いよいよ免許申請です。アメリカでは歯科医師免許が全国共通ではなく、州ごとに申請する必要があります。私が申請したのはイリノイ州だったので、イリノイ州の Dental Board(IDFPR)に所定の申請書や必要書類を提出しました。
申請書はオンラインで入手でき、ダウンロードして記入・郵送するか、SSN(ソーシャルセキュリティナンバー)を持っていればオンライン申請が可能で、こちらのほうが簡便かつ早いです。ただしSSNは労働して対価を得る人に発行されるもので、近年はインターナショナル学生のSSN取得が難しくなっており、免許取得の時点でSSNを所持していない方も多いと思います。
申請途中で分からないことがあれば、IDFPRに電話やメールで問い合わせれば細かく教えてくれます。ただし、電話がつながるまで時間がかかったり、専門的な質問に答えられる人に繋いでもらうのに数日かかったりと、思ったより免許申請には時間がかかります。すべての審査が問題なく終わると、免許がメールで発行されます。私の場合、申請からここまでにトータルで5か月かかり、その間は歯科助手としてしか働けませんでした。

このほかにも、処方箋を書くためには DEAの申請が必要だったり、アメリカは訴訟社会なので Malpractice(医療過誤)保険を契約しなければならなかったりと、やるべきことは目白押しです。ここに書ききれなかった大変なこともたくさんありますが、一応ここまでがアメリカの歯科医師免許を取得するための大まかな流れです。もっと詳しい話を聞きたい方は、ぜひお問い合わせやLINEからご連絡ください^^
ご注意:米国の歯科試験・州免許の制度は改定されることがあります。本記事の制度に関する情報は下記の公式資料で確認していますが(確認日:2026年8月3日)、要件は州や年度で異なり変更される場合があるため、出願・受験・免許申請の最終的な判断は、必ず各公式機関の最新情報でご確認ください。
参考(制度の公式情報)
- 筆記試験 INBDE:Joint Commission on National Dental Examinations(JCNDE/米国歯科医師会 ADA)「Integrated National Board Dental Examination」 https://jcnde.ada.org/inbde
- 実技(臨床)試験 ADEX:CDCA-WREB-CITA(試験実施団体) https://www.cdcaexams.org/ / American Board of Dental Examiners(ADEX) https://adextesting.org/
- イリノイ州の歯科医師免許:Illinois Department of Financial and Professional Regulation(IDFPR)「Dental Professions」 https://idfpr.illinois.gov/profs/dentist.html
- 処方に必要な DEA登録:U.S. Drug Enforcement Administration, Diversion Control Division「Registration」 https://www.deadiversion.usdoj.gov/drugreg/registration.html
執筆・監修:林 剛永(Kangyeong Lim / Taketo Hayashi)DDS, MS, DABOI/ID, DAO・平和歯科医院(愛知県西尾市) | 著者プロフィールを見る
大阪大学歯学部卒、米国 California 州 Loma Linda University Implant Residency 修了(DDS, MS)。日本歯科医師免許・米国歯科医師免許保持。米国インプラント学会(ABOI)認定専門医。本記事は、著者自身が実際にイリノイ州で米国歯科医師免許を取得した経験にもとづきます。試験制度(INBDE/ADEX)・州ごとの免許申請要件・SSN・DEA・保険の要件は、州や年度により異なり、改定されることがあります(本記事の元情報は2023〜2025年時点)。出願・受験・免許申請の最終判断は、各州歯科委員会(例:IDFPR)・ADA・各試験機関等の公式情報で必ずご確認ください。
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