水道水のフッ素化運動!
近年、健康診断の結果を見ると子供の虫歯は減少してきており、これはとても喜ばしい限りです。
しかし、日本の子供の貧困率は年々上昇しており、2014年には16.3%に達し、この値は経済協力開発機構(OECD)加盟34ヶ国の平均貧困率を上回っています。そしてこのことが、健康格差を生み出す大きな要因となっています。
そうした中で、現在、地域すべての人々に平等に虫歯予防を提供する最善の公衆衛生的背作とされている水道水フロリデーション(Water Fluoridation;WF)の導入は確実な成果をもたらすと言われています。
歯磨きの重要性は各地で叫ばれていますが、人によって虫歯への還住性は非常に大きな差があります。何二日かに一回歯を磨くだけの人でも全く虫歯にならない人もいれば、どんなに気をつけて歯を磨いていてもすぐに虫歯になってしまう人もいます。そうした方々にとってはこのWFは大きな福音となる可能性があります。
今回の記事ではそうした水道水のフッ素化について少し詳しく解説をしていきます。
水道水のフッ素化とは?
私達が利用している水道水にはわずかながら、天然由来のフッ化物が含まれています。WFとは、「水道水中に天然に含まれているフッ化物濃度を虫歯予防に最適な濃度に調整すること」です。
定期検診で歯医者さんに行くと虫歯になりにくくするためにフッ素を塗ってくれますよね?どのような効果のあるフッ素を普段の水道水で使えればとてもいいことの用に思えます。
しかし、実際にはWFには大きな課題がある為にいまだ日本では実現されていないようです。次の項目ではその課題について説明していきます。
歯のフッ素症
1900年初頭、アメリカのコロラド州の歯医者さんが歯科診療所を開業したところ、開業した地域に褐色斑のある歯をもつ人が多いことに気づきました。そこで彼らはその褐色の歯を斑状歯と名付け、飲料水中のなにかが影響していること、虫歯に対する抵抗性が極めて高いことを発見しました。
1930年代初頭になると、アルミニウム鉱山がある地域の井戸水から高濃度ののフッ化物が検出されました。その歯医者さんはこの報告を知り、斑状歯を有する人が多い地域の飲料水のサンプルを分析したところ、すべての地域の飲料水から高濃度のフッ化物が検出されました。
こうして斑状歯の原因が飲料水中の高濃度のフッ化物であることが特定されました。この事実から「歯のフッ素症」の名称が生まれた。
ー虫歯をなくすためのフッ素にですが、子供の頃に高濃度のものを頻繁に摂取すると歯の色が変わってしまうことがあるというおおきなデメリットがあります。
では、その後WFの試みはなくなってしまったのでしょうか?
適正フッ化物濃度1ppmの発見
1930年代中盤に、飲料水中のフッ化物濃度、歯のフッ素症の程度、虫歯経験歯数の関係について大規模な疫学調査が行われました。
その結果、
①飲料水中のフッ化物濃度と歯のフッ素症の程度は比例関係にある。
②飲料水中のフッ化物濃度とう蝕経験歯数は反比例の関係にある。
③飲料水中のフッ化物濃度が1ppmであれば審美的に問題となる歯のフッ素症は発現しない。
④飲料水中のフッ化物濃度が1ppmを超えると、う蝕経験歯数は横ばいとなる
ということが明らかとなり、飲料水中の最適なフッ化物濃度は1ppmであることが結論付けられました。
アメリカでの水道水のWFの開始
上記の結果を受けて、う蝕予防のために水道水中のフッ化物濃度を調整するという提案を論文が論文にまとめられ、1940年代に水道水中にフッ化物が少ない4つの地域が選ばれ、WFの介入研究が始まりました。
そしてこれらの結果、WFの高いう蝕予防効果が確認されました。
フッ化物は栄養素
一方で、フッ化物の安全性についてあらゆる角度から継続的に調査・研究が積み重ねられ、「適量摂取であれば安全性に問題はない」とする信頼性の高い膨大な数の論文が発表された。これらをうけ、WHOやFDIを始めとする150以上の医学・保健・政策の専門機関と団体が、WFを含むフッ化物の利用を勧告または推奨しています。
また、米国やEU諸国では、国の機関がカルシウムや鉄などと同様に摂取の目安量と上限を設定し、「フッ化物」を人の健康に欠かせない「栄養素」として位置づけています。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
このようにWFは外国ではすでに行われており、安全性や効果は多くの論文によって評価されています。
日本においてもその安全性が立証され、実施されれば、それにより多くの人の歯が救われる可能性は高いように思われます。こうした運動がもっとひろまり、たくさんの人の支持を得られるとよいですね。
それではまた次回の記事でお会いしましょう。
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