歯周病

歯周病の治し方|治療の流れを図解・再発を防ぐメインテナンスまで

この記事は一般的な情報提供です。 個別の診断・治療方針は、担当の歯科医師にご相談ください。

歯科で「歯周病ですね」と言われると、多くの方が最初に思うのは「これって治るの?」ということではないでしょうか。抜かずに済むのか、通院はどれくらいかかるのか——不安になりますよね。

結論からお伝えすると、歯周病は正しく治療すれば十分にコントロールできる病気です。ただし「治る」という言葉の意味は、進行の段階によって少し違います。この記事では、治療がどう進むのかを図でわかりやすく整理します。

この記事の要点

  • 歯肉炎なら、歯石除去と毎日のケアで健康な歯ぐきに戻せます
  • 歯周炎で溶けた骨は自然には戻らないため、治療のゴールは「進行を止めて、良い状態を保つ」ことになります。
  • 治療は「検査→歯周基本治療→再評価→(必要なら外科)→定期管理」という流れで進みます。
  • いちばん大切なのは治療後のメインテナンス(定期管理)。ここを続けられるかで、将来残せる歯の数が変わります。
ひとことで言うと
歯周病治療とは、原因の歯石・歯垢を取り除いて炎症を止め、その良い状態を定期管理で維持していくこと。手術が必要になるのは一部で、多くは毎日のケアと歯石除去が土台です。

そもそも歯周病は「治る」の?

ここが最初のポイントです。歯周病は進行段階によって、戻せるかどうかが変わります。

歯肉炎(歯ぐきだけの炎症)の段階なら、原因を取り除けば元の健康な歯ぐきに戻せます。一方、歯周炎まで進んで歯を支える骨が溶けてしまうと、その骨は自然には元に戻りません。だから歯周炎の治療は「完全に元通り」ではなく、進行を止めて、今ある歯ぐきと骨を長く保つことがゴールになります。治療の前後で、お口の中はこう変わります。

歯周治療の前と後の断面比較。治療前は歯石と炎症・深いポケット、治療後は歯ぐきが引き締まり炎症が治まる。
▲ 治療前(歯石・炎症・深いポケット)→ 治療後(歯石除去・歯ぐきが引き締まる)。

治療で歯石が取り除かれ、腫れていた歯ぐきが引き締まると、深かった歯周ポケットは浅くなり、出血も治まっていきます。見た目の炎症が引くだけでなく、これ以上骨が溶けるのを食い止める——これが治療のいちばんの目的です。

治療はこう進む——5つのステップ

歯周病の治療は、日本歯科医学会が示す標準的な流れに沿って、段階的に進みます。いきなり手術をするわけではなく、まず基本の治療を行い、その結果を見て次を決めるのが特徴です。

歯周病治療の流れ5ステップ。検査→歯周基本治療→再評価→(必要時)外科・再生療法→メインテナンス/SPT。
▲ 検査→基本治療→再評価→(必要時)外科→定期管理。再評価で次のステップを決める。

STEP1 検査・診断では、歯周ポケットの深さを1本ずつ測り、レントゲンで骨の状態を確認します。STEP2 歯周基本治療が治療の土台で、正しい歯みがきの指導と、歯石・歯垢の除去(スケーリング、そして歯ぐきの奥の歯石を取るSRP)を行います。

STEP3 再評価で治り具合をチェックし、良ければ定期管理へ、深いポケットが残っていればSTEP4 歯周外科・再生療法を検討します。外科が必要になるのは一部の方だけです。そして最後のSTEP5 メインテナンス/SPTで、良くなった状態を定期的に守っていきます。

いちばん大事なのは「治ったあと」

意外に思われるかもしれませんが、歯周病治療でもっとも大切なのは治療後の定期管理です。歯石を取ってきれいになっても、ケアをやめれば細菌は再びたまり、数か月で元に戻ってしまう(再発する)ことがあります。

定期管理を続けた人ほど、歯を残せる
治療後に定期的なメインテナンスを受け続けた人は、受けなかった人に比べて歯の喪失が大きく少ないことが、長期の追跡研究で示されています(Axelsson・Lindhe ら)。治療のゴールは「通院の卒業」ではなく「良い状態のキープ」です。歯周病が安定した後に行う定期管理はSPT(歯周病安定期治療)とよばれ、保険も適用されます。

おうちのケアが、治療の半分

歯科でどんなに歯石を取っても、毎日の歯垢を落とせなければ効果は続きません。治療の半分は、おうちのケアで決まるといっても言い過ぎではありません。

  • 歯と歯ぐきの境目に毛先を当て、小刻みにやさしくみがく。
  • 歯間ブラシ・フロスを1日1回。歯周病は歯と歯の間から進みやすいためです。
  • 喫煙は治りを妨げます。歯ぐきの血流が悪くなり、治療の効果が出にくくなります。
治療を途中でやめないで

  • 痛みが引くと通院をやめがちですが、歯周病は自覚症状が乏しいまま再発します
  • 再評価やメインテナンスは「もう治ったか」を確かめる大切な工程。自己判断で中断しないようにしましょう。

安心して読んでほしいこと

歯周病は、進んでしまっても適切な治療と定期管理でしっかり付き合っていける病気です。大切なのは、怖がって放置しないこと。今日から始めるケアと、歯科での定期的なチェックが、10年後・20年後のあなたの歯を守ります。まずは今の状態を知ることから始めましょう。


よくある質問(FAQ)

Q. 歯周病は何回くらい通えば治りますか?

A. 進行度によって大きく変わります。軽い歯肉炎なら数回で改善することもありますが、歯周炎では基本治療と再評価に数か月かかることもあります。そして治療後も定期管理は続きます。期間は担当の歯科医師に確認しましょう。

Q. 手術は必ず必要ですか?

A. いいえ。多くの方は歯みがき指導と歯石除去(基本治療)で改善します。外科治療を検討するのは、基本治療のあとも深いポケットが残った一部のケースです。

Q. 一度治れば、もう通わなくて大丈夫?

A. 残念ながら、やめると再発しやすいのが歯周病です。良い状態を保つために、数か月ごとの定期管理(メインテナンス/SPT)を続けることが、歯を残すいちばんの近道です。

Q. 溶けた骨は元に戻せますか?

A. 自然には戻りませんが、条件が合えば歯周組織再生療法で一部の骨の回復を目指せる場合があります。適応は限られるため、歯科医師に相談してください。

参考にした主な文献

  1. 日本歯科医学会「歯周病の治療に関する基本的な考え方」(令和2年3月)——歯周治療の標準的な流れ(検査・歯周基本治療・再評価・歯周外科・SPT).
  2. 厚生労働省 e-ヘルスネット「歯周病」——有病状況・基本的な考え方.
  3. Axelsson P, Lindhe J, et al. 長期メインテナンスと歯の喪失に関する追跡研究(J Clin Periodontol)——定期管理による歯の喪失予防.
あわせて読みたい
まず今の状態を確かめたい方は「歯周病セルフチェック(10項目)」、糖尿病との関わりは「歯周病と糖尿病の関係」、歯ぐきの症状は「歯茎の腫れが気になる」「歯茎から血が出る」もご覧ください。
執筆・監修:林 剛永(Kangyeong Lim / Taketo Hayashi) DDS, MS, DABOI/ID・平和歯科医院(愛知県西尾市)
日米で歯科医師免許を持つ口腔インプラント専門医。科学的根拠にもとづく歯科情報の発信に取り組んでいます。著者プロフィールは運営者情報ページをご覧ください。
ABOUT ME
林剛永 D.D.S., M.S., DABOI
2015年 大阪大学歯学部卒業。大阪大学歯学部附属病院での研修、約4年間の開業医勤務を経て、2020年より米国カリフォルニア州 Loma Linda大学大学院に留学し、インプラント歯科学を専攻・修了。ABOI/ID(米国口腔インプラント学会)ボード認定医(Diplomate)。現在は、インプラント治療を中心に臨床に従事しています。大学卒業後、各歯科医院によって方針や治療の幅や質にとても大きな違いがあることに驚き、患者さんが自分に最もあった治療を受けられるようになる一助になればと願い、当サイトを立ち上げました。
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