この記事は一般的な情報提供です。 気になる症状や治療の必要性は、担当の歯科医師にご相談ください。
朝、歯をみがいたら洗面台に赤いものがにじんだ。鏡でのぞくと、歯ぐきがなんだか赤く腫れている——。そんな小さなサインを「疲れかな」と見過ごしていませんか。じつはそれ、歯周病のはじまりかもしれません。
歯周病は、痛みが出にくいまま静かに進む病気です。だからこそ、気づいたときには進んでいたということが少なくありません。まずは10項目のセルフチェックで、いまの歯ぐきの状態を確かめてみましょう。
- 歯周病は日本の成人に非常に多く、15歳以上の約47.9%に歯周ポケット(4mm以上)が見つかっています(令和4年 歯科疾患実態調査)。
- 初期はほぼ無症状。出血・ネバつき・口臭が最初のサインになりやすいです。
- グラつき・膿・歯ぐきが下がるは進行のサイン。当てはまれば早めの受診を。
- 歯周病は糖尿病とも深く関わり、治療で血糖の指標(HbA1c)が改善することも報告されています。
歯周病は「歯ぐきの病気」ではなく、歯を支える骨が少しずつ溶けていく病気です。早い段階(歯肉炎)なら元に戻せます。セルフチェックで気になる項目があれば、痛みがなくても一度歯科で診てもらいましょう。
目次
まずは10項目セルフチェック
次の10項目のうち、いま当てはまるものはいくつありますか。オレンジの枠は、すでに歯周病が進んでいる可能性を示す「進行のサイン」です。

当てはまる数はあくまで受診の目安です。0個なら今のケアを続けていれば安心。1〜2個は歯肉炎のサインで、みがき方を見直す時期です。3個以上、または「進行サイン」に当てはまる場合は、痛みがなくても歯科での検査をおすすめします。とくに歯のグラつき・歯ぐきからの膿は、進行した歯周炎で見られるサインです。
なぜ、痛くないのに骨が溶けるの?
歯と歯ぐきの境目には、歯周ポケットとよばれる浅い溝があります。ここに歯垢(プラーク=細菌のかたまり)がたまると、体はそれを追い出そうとして炎症を起こします。この炎症が長く続くと、歯を支えている骨(歯槽骨)が少しずつ溶けていきます。健康な歯ぐきと、歯周病が進んだ歯ぐきを並べると、その違いがよくわかります。

やっかいなのは、この過程で強い痛みが出にくいこと。骨が溶けても本人の自覚は乏しく、気づいたときには歯がグラついていた、というケースが多いのです。進み方をイメージすると、次のようになります。

ポイントは、歯肉炎までは元に戻せるということ。骨が溶けはじめる歯周炎になると、失われた骨は自然には戻りません。だからこそ、早い段階で気づいて手を打つことが何より大切です。
じつは全身とつながっている——糖尿病との関係
歯周病は口の中だけの問題ではありません。とくに糖尿病とは、おたがいに影響し合う「双方向の関係」があることがわかっています。
血糖コントロールが悪いと歯周病が悪化しやすく(HbA1cが高い人ほど重症化のリスクが上がると報告)、逆に歯周治療を受けると血糖の指標が改善することが示されています。あるメタ分析では、歯周治療の3か月後にHbA1cが平均0.43%低下したと報告されました(Cochrane 2022、35試験・3,249名)。
つまり歯周病のケアは、糖尿病をお持ちの方にとって血糖管理の一部にもなり得るということ。かかりつけの内科と歯科で情報を共有できると、より安心です。
おうちでできること
歯周病予防の基本は、原因となる歯垢を毎日きちんと落とすこと。とはいえ「強くゴシゴシ」は逆効果です。次のポイントを意識してみてください。
- 歯と歯ぐきの境目に毛先を当て、小刻みにやさしく動かす(力は歯ブラシを持つ手が白くならない程度)。
- 歯間ブラシ・デンタルフロスを1日1回。歯ブラシだけでは歯と歯の間の歯垢は落としきれません。
- 出血しても、その部分こそ炎症がある場所。避けずに、やさしく続けることで数日〜数週間で落ち着いてくることが多いです。
- 喫煙は歯周病の大きなリスク。タバコは歯ぐきの血流を悪くし、治りを妨げます。
歯医者さんでは、どんなことをするの?
歯科ではまず、歯周ポケットの深さを1本ずつ測る検査(プロービング)で、いまの進行度を正確に把握します。そのうえで、
- 歯垢・歯石を専用の器具で除去するクリーニング(スケーリング)
- ポケットの奥深くの歯石を取り除く処置(SRP)
- 進行した場合は、歯ぐきの状態を整える処置や外科的な治療
を、進行度に合わせて行います。歯肉炎の段階なら、クリーニングと毎日のケアだけで健康な歯ぐきに戻せることも多くあります。
- 歯ぐきから血や膿が出る、押すと痛い
- 歯が浮く・グラつく、噛むと違和感がある
- 歯ぐきが下がって歯が長く見える、すき間が広がった
- 口臭が強くなった/人に指摘された
安心して読んでほしいこと
歯周病はとても身近な病気ですが、正しく手入れをすれば十分にコントロールできる病気でもあります。大切なのは、痛くなってからではなく「サインの段階」で気づくこと。このセルフチェックが、その最初のきっかけになればうれしく思います。気になる項目が一つでもあれば、どうか怖がらずに、一度かかりつけの歯科でご相談ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 歯みがきで血が出ます。やめたほうがいい?
A. いいえ。出血する場所こそ、炎症が起きているサインです。強くこするのは避けつつ、やさしく毎日みがき続けると、多くは数日〜数週間で出血が落ち着いてきます。それでも続く場合は歯科で相談を。
Q. 痛くないので大丈夫ですよね?
A. 痛みがないことは「進んでいない」証拠にはなりません。歯周病は痛みが出にくいまま進むのが特徴です。セルフチェッ
クで気になる項目があれば、痛みがなくても一度検査を受けると安心です。
Q. 一度下がった歯ぐきは元に戻りますか?
A. 炎症による腫れが引いて見た目が改善することはありますが、骨が溶けて下がった歯ぐきが完全に元どおりになるとは限りません。だからこそ、進行させないことがいちばんの対策です。
Q. 若いのですが、歯周病になりますか?
A. なります。歯肉炎は10代でも見られ、年齢とともに歯周炎の割合が増えていきます。若いうちからのケアが、将来の歯を守ります。
参考にした主な文献
- 厚生労働省「令和4年 歯科疾患実態調査」(15歳以上で4mm以上の歯周ポケットを持つ人の割合など).
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「歯周病」(有病状況・年齢による増加).
- 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」第16章 歯周病(歯周治療とHbA1c、糖尿病と歯周病の双方向性).
- Simpson TC, et al. Treatment of periodontitis for glycaemic control in people with diabetes mellitus. Cochrane Database Syst Rev. 2022(歯周治療によるHbA1c低下).
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