海外歯科キャリア

日本の歯科医師が米国で学ぶ3つの道――専門医・大学院・研究留学を現役が解説

スーツケースと歯のモチーフから3本の道が専門医・大学院・研究留学へ分岐するイラスト

「米国で歯科を学びたい」――そのゴールは一つではありません。専門医レジデンシー・大学院・研究留学という、性質のまったく違う3つの道があります。

そして大事な前提として、これらは「米国で診療できる開業免許を取る」道とは別物です。まず地図を分けて理解すると、自分がどこを目指すべきか、何を準備すべきかが一気にクリアになります。この記事は、日本の歯科医師・歯学部生に向けて、米国で”学ぶ”3ルートを1枚に整理する中心ページです。各ルートの詳細は個別記事で深掘りしていきます。

この記事の要点

  • 米国で学ぶ道は「①専門医レジデンシー ②大学院(MS/PhD) ③研究留学」の3つ。目的も出願方法も、必要なビザも異なる。
  • 専門医・大学院の多くは共通出願サービスADEA PASSで出願(開業免許向けのCAAPIDとは別サービス)。研究留学は主にJ-1(交流訪問者)ビザ。
  • レジデンシーや研究に入っても、それだけで米国で自由に診療できるわけではありません。診療には別途 州のライセンスが必要です。制度は改定されるため、最終判断は必ず各公式で確認を(本記事の確認日:2026年7月28日)。

[図1:米国で学ぶ3ルート比較図]
3列(専門医レジデンシー/大学院MS・PhD/研究留学)×行(目的・主な出願経路・代表的なビザ・診療可否)の比較図。後日ChatGPTでベース生成→ラベルは別途。

大前提:「診療する」道と「学ぶ」道は分けて考える

米国で一般開業医として診療するには、原則としてCODA認定校の学位取り直し(Advanced Standing/CAAPID経由)と州ライセンスが必要です(→別記事で解説)。一方、本記事で扱う専門医レジデンシー・大学院・研究留学は「学ぶ/研究する」ための道で、出願の入口も条件も異なります。ここを混同すると準備が的外れになります。

ルート①:専門医レジデンシー(Advanced Specialty Education)

矯正・歯周・歯内療法・補綴・小児歯科・口腔外科・歯科公衆衛生・口腔病理/放射線などの専門教育プログラム(レジデンシー)に進む道です。一般歯科の卒後研修(GPR/AEGD)もここに含まれます。

出願は、米国歯科教育協会(ADEA)の共通出願サービスADEA PASS(Postdoctoral Application Support Service)を通じて複数プログラムへ。ADEA PASSには「International Dentists(国際歯科医師)」の区分があり、外国歯学部卒も出願対象です(開業免許向けのCAAPIDとは別サービス)。

ADEA PASS の要点(2026–27年サイクル):出願期間 2026年5月13日〜2027年2月12日。費用は1プログラム目 $199、追加1件ごと $92。プログラムによっては選考にNational Matching Service(いわゆるMatch)を併用します。
※各プログラムで必要書類・試験(INBDE等)・国際卒の受入条件は異なります。詳細は各プログラムとADEA PASSの最新案内で確認を。

注意:国際歯学部卒の受け入れ可否・条件はプログラムごとに大きく異なります(外国卒を直接受け入れる所もあれば、米国DDS取得を前提とする所も)。また、レジデンシー修了=専門教育の修了であり、専門医(board certification)認定は各専門医機構による別手続きです。

ルート②:大学院(MS/PhD・Advanced Education)

研究や教育職を視野に、修士(MS)や博士(PhD)、あるいは臨床と学位を組み合わせた高度教育課程に進む道です。多くはADEA PASS または各大学院の個別出願で応募します。専門医レジデンシーと学位(MS等)を同時に取れるcombined programもあり、進路設計の幅が広いのが特徴です。

ルート③:研究留学(リサーチフェロー/客員研究員)

米国の歯学部・研究機関で研究に従事する道です。多くは受け入れ機関のスポンサーのもとJ-1(交流訪問者)ビザの「Research Scholar」区分で渡米します。J-1(研究)では米国で診療する資格は付与されません——あくまで研究・教育のための在留です。臨床を伴う場合は別途の資格・許可が必要になります。

自分に合うルートの選び方

ざっくり指針としては、臨床の専門性を深めたいなら①専門医レジデンシー、研究者・教育者を目指すなら②大学院、まず研究経験を積みたい/短中期で挑戦したいなら③研究留学が入口になります。①②は出願サイクルが年単位で決まっており(PASSは春開始)、早めの準備(英語・出願書類・試験)が要になります。

まとめ:3ルートを地図にしてから、個別準備へ

米国で学ぶ道は「①専門医レジデンシー/②大学院/③研究留学」の3つ。出願の入口(ADEA PASS/各大学院/受け入れ機関)も、ビザ(学生・交流訪問者)も、診療可否も異なります。まずこの地図で自分の目的地を定め、そこから個別の準備に進みましょう。

次に読む(各記事は近日公開。公開後にリンクを設定します)
・体験談:なぜ私はアメリカ歯科留学を決めたのか(第1話)(近日公開)
・ADEA PASS 出願の流れ(専門医・大学院)(近日公開)
・研究留学とJ-1ビザの基礎(近日公開)
・【補足】米国で開業医になるルート(CAAPID→Advanced Standing→州ライセンス)(近日公開)

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出典(すべて公式・確認日:2026年7月28日)

  1. ADEA「ADEA PASS – Applicants(対象・費用・サイクル・International Dentists区分)」 https://www.adea.org/home/application-services/apply-to-advanced-programs/adea-pass-applicants
  2. ADEA「ADEA CAAPID Applicants(開業免許向けAdvanced Standing・PASSとの別サービス)」 https://www.adea.org/home/application-services/international-dentists/adea-caapid-applicants
  3. American Dental Association(ADA)「Licensure for International Dentists(診療には認定学位+州ライセンス)」 https://www.ada.org/resources/careers/licensure/licensure-for-the-international-dentists
  4. U.S. Department of State「J-1 Exchange Visitor — Research Scholar」 https://j1visa.state.gov/programs/research-scholar

執筆・監修:林 剛永(Kangyeong Lim / Taketo Hayashi)DDS, MS, DABOI/ID, DAO・平和歯科医院(愛知県西尾市)著者プロフィールを見る
筆者自身も米国のレジデントプログラムで学んだ経験があります。

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の出願可否・資格取得・ビザ取得を保証するものではありません。プログラムの受入条件・費用・制度は改定されることがあります。最新かつ正式な要件は、ADEA(PASS/CAAPID)・ADA・各プログラム・U.S. Department of State/USCIS 等の公式情報で必ずご確認ください。

情報確認日:2026-07-28

ABOUT ME
林剛永 D.D.S., M.S., DABOI
2015年 大阪大学歯学部卒業。大阪大学歯学部附属病院での研修、約4年間の開業医勤務を経て、2020年より米国カリフォルニア州 Loma Linda大学大学院に留学し、インプラント歯科学を専攻・修了。ABOI/ID(米国口腔インプラント学会)ボード認定医(Diplomate)。現在は、インプラント治療を中心に臨床に従事しています。大学卒業後、各歯科医院によって方針や治療の幅や質にとても大きな違いがあることに驚き、患者さんが自分に最もあった治療を受けられるようになる一助になればと願い、当サイトを立ち上げました。
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